回想-音楽 ページ3
仲良くなったのはどうしてかな。
そう共通点の多かった私たちでもなかったんだけど
あぁ、そうか。友達が実弥のことを知ってたんだ。
それから4人くらいで一緒にいることが多くなって
自然とよく話すようになった。
ちなみにお互いの名前を知ったのもそのときで
それまでは名前も知らないご近所さんらしき人とバス停で言葉を交わしていたのだ。
『不死川…くん』
知らない名前の代わりにうさぎくんと呼んでいたので
あぁこの適当なあだ名ともお別れかと寂しく思った、
なんてことはなく。
「津城…か。おん、よろしくなァ」
それから、いろいろ話すことになるんだけど
ふたりとも音楽が好きで、その話をよくした気がする。
いや、音楽なんてみんな好きだと思うんだけど。
『バンド系がやっぱり好きかな。
普通に流行り物にハマるタイプだからあんまり面白くないと思うんだけど…』
「そんなもんが流行ってんのかよォ」
実弥は一昔前の洋ロックとかに詳しかった。
懐古趣味なのかと言うとそこまで古くはないと言われた。
『でも、これは洋楽感あっていいんじゃないかな。
サウンドも結構ハードで…』
話すのも得意な方ではないのだが趣味のことになるとつい話してしまう。
でも彼は嫌な顔ひとつせず聞いてくれた。
「ふーん…今度聴いてくらァ」
実弥はそう言うと律儀にすぐ聴いて感想をくれる。
本当に律儀だ。
すすめられた音楽を聴いてくるね、なんて言ったところでだいたいみんなすぐには聴かないと思う。
だから私もすぐに聴くことにした。
案外良いもので、これは私が好みそうなものを選んでくれたというよりそのバンドが耳にあったのだろう。
よかったよ、と言うと実弥は喜んだ。
よかったぜ、と言われると私も喜んだ。
好きがあると楽しいし、共有できたらもっと楽しい。
そんな当たり前のことを感じる瞬間が幸せだった。
今はもう、彼の好きだった曲は聴かなくなっちゃったな。
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