幸せを願う【不死川実弥】 (ページ18)

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不死川実弥の話ページ18

たまには俺の話をしよう。

恋愛には全く縁がなかった。
覚えがなさすぎて自分はそういうものをしない体質なのかそれとも恋愛の記憶だけすっぽり抜け落ちているのかと玄弥に聞くと哀れみを持った目を向けられた。

Aは特段変わった奴とも思わない。

ほんわかした雰囲気で、趣味も話も合う知り合い。

それが変わったのはどうしてだろうか。

単純な話で、Aと居れば幸せだしいなければ寂しい。

事あるごとに彼女のことを思い出しては
彼女ならなんて言うだろう、どんな顔をするだろう、なんて考えたり。

ここまでひとりの人間のことを考えることがなかったので
そうかこれがいわゆる恋かと納得して今に至るわけだが。

『玄弥、俺とこいつそんなに似てるかァ？』

そっくり！と笑うAを思い出す。
自分ではこんなうさぎとは似ても似つかないと思っているが。

「似てる。兄貴がうさぎになったら絶対こんな感じだよ」

『そうかァ』

言い返さない俺に戸惑う玄弥。

思えば出会った頃からだったと思う。

初めて会った日、理由もないのに困ったように視線をせわしなく動かす彼女が気になって
その日はずっとどうやって話すべきか考えていたような。
もしかして一目惚れなのかもしれない。今となっては定かではない。

そういえば恥じらうような笑顔が印象的だった。

「兄貴、また津城さんのこと考えてるよな」

『また…？そんなに言うほど考えてねぇだろ』

「今は否定しないんだ…」

なるほど重症らしい。
彼女は今頃どこかでくしゃみでもしているのではないか。

『こいつ、そんなに可愛くねぇと思うんだが』

ずっと見てると可愛さが分かるんだよとあいつは言うが
目を合わせているとひたすらガンを飛ばされている気になる。

「可愛いんじゃない？兄貴に似て」

『あいつみてぇなこと言うのなァ…』

目つきは悪いしムスっとしてるし。いやそれは自分の顔に対してよく受ける評価だから似ているのか。可愛いは初めてだが。

「なんやかんやでずっと鞄につけてるし、気に入ってるんだろ？」

『別に。Aが気に入ってるだけだ』

玄弥が肩をすくめた。

彼女は今頃風邪かな？とか思っているかもしれない。