回想-酒は飲んでも ページ15
付き合いだしてから、あまり変なことを考えることもなくなった。
滅多なことがない限り多分実弥は離れていかないだろうと思ったから。
ああやっぱりこれでよかったんだと思ったが
気がかりなこともあった。
『…実弥、その傘どうしたの?』
「あァ、いきなり降り出して困ってたら借してくれた
2本持ってるっつって」
『良かったね。…借してくれたの女の子でしょ』
「よく分かんだなァ」
『似たようなの持ってる子見かけたから』
…実弥によくちょっかい出してるし。
絶対自覚ないんだろうなぁこの人。あーやだやだ。
こういうとこだけ心許ないなぁ…
『次は私が2本持ってくるね』
「ありがとなァ…?」
やっぱり嫉妬深いのは変わっていないのかもしれない。
けど、実弥は誠実な人だから。大丈夫だ、きっと。
ーーーーーーーーー
「さね…不死川くんお酒いける?」
『まぁ、そこそこなァ』
「…だったら飲んでもらっていいかな。私あんまり…」
大学の飲み会、飲めないAは無理矢理酒を注がれて困っているようだ。
「…不死川と津城ってよく一緒にいるよな」
「付き合ってんの、お前ら?」
返答に困る。一応伏せてはいるものの、別に言ったって構わない。
問題はAが怒らないかと言うことで、彼女に視線を送ると
「…」
Aはどこか惚けた目でこちらを見た。
顔も赤らんでいるし、様子がおかしい。飲んだのだろうか。
『おい、津城』
「…実弥」
そのまま抱きつかれて心臓が止まるかと思った。
まわりが一斉にざわめいた。
『ば、馬鹿お前、何やってんだァ!』
「んー?」
彼女のそばには空のグラスがあって、間違えて飲み干してしまったにしてもこれだけの量でこんな酔い方をするのか。
面倒なことになったのでAを抱き上げ退散する。
『A、大丈夫か?』
「大丈夫だよ?…ふふ、実弥」
小さな子供のように甘えてくる。
『自分で歩ける?』
「うん。あ、やだ。抱っこ」
『抱っこってお前なァ…』
「やっぱり歩けない。ね、お願い」
何を言っても自分で歩く気なんてないだろうに。
『…もしもし、玄弥。兄ちゃんなァ、今日は帰らないかも知んねぇわ。
おん。家族には適当に言ってといてくれェ、じゃあな』
戸惑う玄弥。俺は何も言わず通話を切った。
案の定Aの家まで来てしまった。
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