幸せを願う【不死川実弥】 (ページ14)

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回想-初デートページ14

問題は、ふたりとも恋愛下手ということだった。

友達の感覚も染みつきすぎていて、
恋仲って何？うける、みたいな。
なんともどうしようもない私たちだった。

『で、でもこれだと付き合った意味ないじゃんね…』

「そうだなァ…」

だったらやっぱ友達になる？とか言い出されても困るので
知り合いを頼ってみたりするのだが。

「映画とか行ったら？」

「お家デートすればいいじゃん！」

経験済みと言ったらどんな顔をされることだろう。

大学生だよ私たち。もう幼稚園からやり直したいレベル。
恋愛って難しい。

『すぅー…はぁー…ごほんごほん』

「どうしたァ」

『ちょっと待ってね、今気合い入れてるから。がんばれ私！』

怪訝な顔をする彼。
言おう、言おうね私。

『実弥、デートしよう！』

「げほっ」

実弥がなぜかむせた。

『あ、ごめん…不死川くん』

「ばっ、なんで言い直すんだよお前、そこは名前でいいだろうがァ」

『う、うん、実弥！』

呼び方ごときでこの大騒ぎ。うるさい。

『それでね！デートっていうのはライブコンサートのことなんだけどね！』

「音量バグってんぞォ」

いけないいけない、動揺している。

『ごほん！…一緒に行こう？』

「行くに決まってんだろ、A？」

『即答だね…って、今Aって呼んだぁ！？』

「悪かったかよ」

『悪くないです！』

心臓には悪い。

無理矢理デートと名称をつけたものの叫び散らしてはしゃぐライブなのでロマンチックのロの字もない。まぁ私たちらしくていいじゃないか。

『今日のライブもアツかった～。いつも安定のぼっち参戦だったけど、やっぱり誰かと行くの楽しいね！』

「新曲すげぇ良かった…鳥肌立ったぜェ」

ライブグッズのストラップもお揃いで買ったし大満足。
あんなにテンション高い実弥はきっと滅多にお目にかかれないのでそれも嬉しかった。

『また来ようね！』

「おう」

『で、でもさ…なんかデートっぽいデートもしよう…ね？』

「顔あっか」

『うるさーい！』

初デートはとにかく楽しかったし大成功ということでいいだろう。