回想-返事 ページ13
さて、私の話でもしようか。
かくいう私も恋愛沙汰には疎いんじゃないかと言われる。
別に、人並みだ。
ただ、誰かを好きになっても確信を持てずに迷い続けて
気づけば離れ離れになって終わる。
いや、それが疎いってことか。
一回好きになった人には、重いって振られちゃった。
あぁ、重いのか私。
ちょっと寂しがりなだけだと思ってたけど、重かったんだ。
多分恋愛は向いてない。どれだけ心がずたずたにされたか知らないし。
だから、実弥のことも友達で片付けようと思ったんだ。
『…はぁ』
好きじゃん。
私、どう考えても不死川くんのことが好きだ。
激しい鼓動と醒めない熱が証明している。
いつからかなんて分からない。
でも、ちょっとずつ頭の中が不死川くんのことでいっぱいになって
気づいたら好きになっていた。
だったら幸せなことだね。両想い。
なのに、怖くて。
不死川くんにも重いと思われたらどうしよう。
潰しちゃったらどうしよう。
優しいから付き合ってくれそうだな、ずっと。
『おはよう』
「おはようさん」
いつもの挨拶。彼はほとんど気持ちが顔に出ない。
私は多分緊張が顔に出てたんじゃないかな。
『あの、昨日の返事だけどさ。
…わ、私も不死川くんのことが好きだよ』
「…」
『えと、だから、付き合ってください…?』
不死川くんは一瞬固まった。
『しな、』
「お前、こういうときいっつも片言の敬語になるよな」
照れ隠しのようにからかわれて頬が緩む。
「…よろしくなァ、津城」
『はい!』
握手を交わす、とまた涙が出そうになった。
だめだ、流石に泣きすぎて引かれるぞ。
「そんなに泣きそうな顔すんなよなァ」
『泣きそうじゃないもん。
…不死川くんの手冷たいね』
「お前の、あったけェな」
そう言うから、両手で彼の手を包む。照れくさいのを笑ってごまかした。
お互いの白い息がぶつかって混じる。
次の言葉を模索して、沈黙が訪れた。
夢心地の私たちを現実に引き戻すようにバスが来た。
けれど心はずっとふわふわしていた。
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