幸せを願う【不死川実弥】 (ページ12)

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回想-混乱ページ12

「津城」

『ん？』

暗くなった帰り道、凍りつくような寒さに手を擦り合わせて耐えていた。
不死川くんがいつものように私の名前を呼んだ。

次の言葉はせいぜい「明日は曇りだなァ」とかだろう。

それくらい自然に

「…好きだ」

『……何が？』

唐突。

突拍子もなく好きだとか言われても。目的語が無いぞ。

「お前が」

ほ、とかは、とか気の抜けた声を出した。
周りを見回しても人はいないのでお前というのは私か。

『…からかってるのかな』

「違う、本気だァ」

あぁ、最低の返しをしてしまった。ごめん、他意はない…
その表情を盗み見ようとすると、まっすぐな視線とぶつかって慌ててそらした。

突然の、突然すぎる告白だった。

夢なのかな。夢じゃないな。

不死川くんが、私のこと好きだったんだ。
恋に疎い不死川くんが。あんなに無愛想だった不死川くんが。

ふと頬に温かさを感じる。

待って、なんで泣いてるの。

『あ、ごめん、違う、なんかびっくりして……なんだろう、あはは』

わたわたする私を見て、不死川くんは驚いていたようだったが表情を緩めた。
涙もろすぎんだろ、とでも言いたげだ。

『ごめんね、いやごめんなさいって意味じゃなくて
その、混乱してて…あの、私』

「いいから、落ち着いてから話せェ」

『う、うん』

そうこうしているうちにバスが来て

どうしよう。なんて言えばいいの？

まず、切り出し方も分からない。

不死川くんは私の横でずっと黙ってて
返事を待ってるのかな。

『し、不死川くん』

「おう」

反応がちょっと早い気がする。

『明日で…いいです…か……』

「構わねェよ」

彼はぼそっと言うと窓に頭を預けた。
そして息を吐きだした。

気が抜けたように見えて、申し訳ない。

ごめんね、ちゃんと言えなくて。

『…明日、絶対朝会うじゃん』

明日と言ってしまったし、返事は返さないと。
帰りのバスはとにかく気まずかった。

これが続くとなるとかなり辛いから、私も早いところ結論を出したい。

好きだ、って。
あの時は混乱しててよく分からなかったけど
めちゃくちゃ告白じゃん…恥ずかし…

『なんか…あつい…』

顔があつくなって、胸が痛い。
擬態語はずきずきでもきゅんきゅんでもどっちでも。

あれ、これって…