回想-映画 ページ11
『不死川くんもこれ観たかったんだね〜、確かにこういうの好きそう』
「津城も絶対観たいだろうと思って。間違いねェだろ」
『やっぱり趣味合うね』
「そうだなァ」
やっぱり嬉しい。彼も嬉しそうに見えるけど、どうなんだろう。
今思うとこのへんから、私は実弥に恋してた。たぶん。
けど、恋愛向いてないからなぁ。
『ポップコーン食べる?』
「おう。あーでもたいがい残すし…」
『私もそんなに食べないから半分こしよっか!
すいませんポップコーンひとつ!』
そういえばこのポップコーンのせいで手が当たりまくって大変だった。
実弥は足元が暗いからと気遣ってくれる。
女の子はみんな優しくされると弱いのを知っているのだろうか。
いや知らないに決まってる。
『うっ、ぐず…』
「泣きすぎじゃね」
『いい話だった…』
「そうかもしれねェけどなァ、お前泣くの早すぎなんだよ。情緒不安定か」
その通りだよ。
とにかく最近涙もろくなって、どうしたことやら。
どうにか涙も収まって、びしょぬれのハンカチを畳む。
『ちょっと、何笑ってるの』
彼が肩を震わせていた。
「いくらなんでも泣きすぎだろ…普通ハンカチそんなことならねぇって」
人の泣くのでそんなに笑うなんて悪趣味だ。
そう思う前に、やっぱり彼の笑う顔が好きだと思った。
他の人には見せたくない。
『あ、あの』
「どうしたァ?」
『いい時間だし、晩ご飯食べて帰りません…か…』
「なんで敬語なんだよ、俺もそう言おうと思ってたとこだァ」
実弥はとにかく疎いというか鈍いので一緒にご飯を食べようなんて言ったところで変に思うことはないのだが、そのときの私にはひどく重大なことに思えて。
今思うとそれも恋なんだろう。
『…不死川くんはさ、よく友達と映画とか行く?』
「よくってほどじゃねェけど、行くだろ、普通に」
そりゃそうだ。何聞いてるんだ、私。
『映画好きなの?』
「劇場まで行って観る方でもなかったんだけどよォ、
ダチに誘われて行ってみると良さが分かるもんでなァ」
『へぇ、じゃあ自分から誘うことってあんまり無いの?』
「そうかもなァ」
『そう…なんですか…』
ひとりでに口角が上がってくるのをおさえる。
これってそういうこと?そういうことってどういうこと?
よく分からないけど嬉しくなる私は単純だった。
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