幸せを願う【不死川実弥】 (ページ2)

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回想-出遭いページ2

実弥と初対面は3年くらい前。

どこで遭ったんだっけ。

そうそう、バス停だった。

バスを待っていたら実弥が隣に来た。
それだけ。

言葉は交わさなかった。

バスに乗ってからも全然近くもない席に座って
けれど同じ大学の人なんだっていうのはそのときに分かった。

はじめてした会話はなんだろう。
落とした修正テープを拾ってもらって

『ありがとうございます』

って言ったのかな。

実弥は何も言わなかったし会話とは言わないか。

じゃあ初めての会話は？あれもバス停だっけ。

「…バスならさっき行ったぜ」

息を切らしてバス停に着いたとき、そう言われた。
先にいた彼も乗れなかったみたいだ。

『あ、ありがとうございます…？』

「次まであと20分くらいあるからよ、
急いでんなら待たない方がいいんじゃねえのかァ？」

『いえ、急いでないので…』

当時の私はひょっとしてどっか行けという暗示だったのか？と考えもしたが、今思うとただの気遣いだった。

バス停のベンチで話すべきか否か私も、実弥も考えたことだろう。

けれど同じ大学だし、降りるところだって同じ。
つまりご近所さんかもしれないのだ。

ちょうど一人暮らし始めたばっかりだしな、ご近所さんがいるのはありがたい。

でも、話すべきだとしても私にはできない。
人見知りだし、冷たくあしらわれでもしたら辛いし。

でも気になるのは気になるので見ていると、彼の鞄に目が行った。

「…こいつか？」

彼は自分の鞄についた小さなうさぎのぬいぐるみを指さした。
見てるのバレてた…

『あ、いや、大したことじゃないんですけど…
うさごえもん好きなんですか？』

生意気な顔をしたうさぎのキャラクターだ。

たしかそんな名前だったはず。

「うさ…？あぁ、こいつそんな名前なのかァ」

まるまるとしたうさぎはお世辞にも彼の見た目には合ってない。
けれどよく見たらなんだか顔つきが似ている気がする。

「別に好きとかじゃねぇけどよォ…弟に押し付けられたんだよ」

兄貴に似てるからあげる、と言われたと不満げに話していた。

それでもちゃんと鞄に付けるんだな、変なの。

そうだ、確かあの頃は実弥を心の中でうさぎくんと呼んでいたっけ。