好きで溢れて【鬼滅の刃_短編集】

我妻善逸．強くて優しくて ページ48

「Aちゃん！」

ドタドタとやってきたのは同期の善逸。

『何』

「いや、また大怪我したって聞いて来てみたら顔って！
女の子の顔に傷つけるとか許せないんだけど！？」

『こんなのすぐ治るよ』

「そんな包帯ぐるぐる巻き大変に決まってるでしょ！？」

『傷、見せたげよっか？』

「いらない！！」

うるさいなあ。
怪我人のところにわざわざ来て騒ぐほうがどうかと思う。

「駄目だよAちゃん、もっと自分の体大事にしないと」

善逸は決まってそう言う。
ふざけてるんじゃないか、鬼殺隊が自分を大事になんて。

『そんな余裕あると思う？
…私、弱いんだもん。あんな奴らと人護りながら戦うとかさ、
自分のことなんて気にしてられないって』

弱いから、怪我をした。
弱いから、心配させた。

「Aちゃんは強いよ」

善逸は私の手をぎゅっと握った。

「死にたくないって逃げてばっかりの俺に比べればさ」

…たしかに、善逸って弱っちい。
最初はそう思ってた。

『でもさ、善逸だって弱くないよ』

「いや、俺は」

『なんやかんやで困ってる人を見捨てられなくて、
結局泣きながらでも刀を握って、頑張ってるじゃん。
ずっと見てきたよ。何回も死にかけたよね』

「…」

『私、善逸はすごく強くて優しい人だと思ってる』

なぜか泣きそうな顔をしていた善逸は、ついに泣いてしまった。

『ど、どうしたの』

「うぅ、Aちゃん！そんなに俺のこと…。結婚しよう！」

『やだ』

性懲りもなく言い続けていれば頷くと思ったら大間違いだよ。

「えぇー…いや、そうじゃなくてさ
なんか、嬉しくて」

『こんなことで？』

「こんなことかもしれないけど、自分を認めてくれる人がいるってこんなに嬉しいんだなって…えへへ、頑張ってきてよかった！」

よく分からないけど、泣きながら笑う善逸を見ているとこちらもなんだか嬉しくなる。

『…いつも心配してくれてありがとうね』

「いえいえ…って、そうだよお！心配してるんだからね！」

心配なんてうざったかったけど
ちょっとだけ、素直になれた。
どうしてかな。

「…ほんとに。ずっと、生きてね。明日も、一年後も十年後も」

『うん』

約束してしまったものは守らなきゃね。

強くて優しいけど、泣き虫な善逸のために
精一杯、生きてみるよ。

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