錆兎・真菰.幽霊 ページ43
お盆休み、私は母の実家に来ていた。
かなり田舎。緑がいっぱい。
祖父母と両親は昔話に花を咲かせていたが私にとっては楽しいものでもなく、外を散策することにした。
やっぱり空気は澄んでる気がするなあ。
生き物の声がたくさんするのも、なんだか好きだ。
祖父母の家は山の麓にあった。
なんだか不思議な感じのする山で、私は恐る恐る足を踏み入れた。
『うわっ』
なんだこれ、落とし穴?危うく落ちるところだった。
歩いているとそういう罠のようなものがちょくちょく見つかる。
どうしよう、熊でも出るのかなあ。
どきどきしながらも何かに誘われるように、
私はふらふらと奥の方へ歩いていく。
『…やばいなあ』
どっちに進めばいいか分からなくなってきた。
どこを見渡しても同じ景色だし。
これって、もしかしなくても遭難ってやつ…
「…あの人、迷ってるんじゃない?」
他に人なんていないと思っていたが、後ろで声がした。
振り向くと、少女と少年が立っていた。
「そうだな。好きこのんでこの山に入ってくる者はもういない」
これまた、変な子達だ。
少年は宍色の長髪で、口元に傷がある。
少女は花柄の着物の、小柄な子だった。
二人とも頭に孤面を付けていて、私より小さいはずなのにあまり子供らしくない子供だった。
『…誰?』
「俺たちが見えるのか」
「わぁ、見えるんだ。お姉さん」
見えちゃいけないの?くっきり見えるんだけど。
でも、ただの人じゃないという方が納得できるか。
「驚かないんだね」
『ここで、何を』
「何…とは。ほら、盆だから黄泉の国から帰ってきて、かつて居た場所がどうなっているか見にきたんだ」
やっぱりそういう人…幽霊なんだ。
『毎年?』
「あぁ、毎年」
いったい何年ここを見てきたんだろう。
「昔は年中住み着いていたけどねぇ。
もう、その必要もなくなった。変わったよね、世界は」
「そうだな。護ってくれたんだ」
『?』
祖母の話を思い出す。
昔は悪い化け物が人を食う世の中で、その化け物を倒す剣士がいたのだと。
おとぎ話だと思っていたけれど。
「あぁ、ごめんねお姉さん。困ってるんでしょ、帰してあげるよ」
「俺たちに会ったことは、言わないようにな」
『う、うん』
うなずいた時には、山から出ていた。
釈然としない夢を見ていたような、けれど安心するような変な感じ。
もう一度山に向き直ると、虫の声だけじゃない、いろんな音が聴こえた気がした。
178人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「鬼滅の刃」関連の作品
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
いのり(プロフ) - みなさんお久しぶりです作者のいのりです!最近更新頻度かなり落ちてて申し訳ないです。今は長編メインで書いているのでこっちの短編は息抜き程度で書くことになると思います。リクエストは受け付けていますのでぜひお願いします!!いつもありがとうございます (2021年8月12日 23時) (レス) id: a2d88c155e (このIDを非表示/違反報告)
シルビア☆姉貴 - いのりさん» 善逸をもう少し増やして欲しいです!!!!!!伊黒さんで過保護。お願いします。 (2021年6月17日 23時) (レス) id: 769a4deb70 (このIDを非表示/違反報告)
シルビア☆姉貴 - いのりさん» 伊之助…………、可愛い…………。(///ω///)リクいいですか!?(?_?)獪岳(人間時)でツンデレ。かまぼこ隊のヤンデレ。お願いします。 (2021年6月17日 23時) (レス) id: 769a4deb70 (このIDを非表示/違反報告)
澪凪(プロフ) - 伊之助ので、夢主が看病してもらう話いいですか? (2021年6月12日 21時) (レス) id: 279a2ef6a9 (このIDを非表示/違反報告)
吹雪 - 千寿郎君で、花火大会。お館様の妹で過保護お願いできますか (2021年5月31日 21時) (レス) id: 1d6f0bde69 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ