好きで溢れて【鬼滅の刃_短編集】

煉獄杏寿郎．自由な太陽 ページ39

「A、おはよう！」

開いたから顔を出すのは太陽と、
太陽のような笑顔の恋人。

『おはようございまふ…』

「今日は二人で出かけよう！早く支度をするんだ」

『え？は、はい』

恋人…煉獄さんからの突然の誘いに、寝起きの朦朧とした意識のまま立ち上がる。
とりあえず着替えよう。

「それでは俺は失礼する！」

すぱーんと襖を閉める煉獄さん。

頼もしくて優しい彼に私はずっとずっと憧れていて
最近念願叶って恋人になったわけだが

案外、自由な人だった。


『お待たせしました』

「随分とめかしこんだな」

『はい、煉獄さんとのお出かけなので…』

なんだか言っていて恥ずかしい。
伏せていた顔を上げると、煉獄さんは困ったように眉を下げた。

「うむ、それはきついな」

『え？あの…』


聞いてない。
てっきり甘味処だとか、呉服屋だとか
そんな楽しいお出かけを想定していたのに

『終わりました…』

「ありがとう！では苗を植えるとしよう」

まさかの土いじり。
なんでも好物のさつまいもを自分で育てようと思い至ったらしい。

いつの間に借りたんだ、こんな大きな畑。

「あぁ、せっかくの服が汚れてしまったな」

『これくらい…どうってことありません…』

いや、ある。勝負服なんだぞ。
最初から言ってよ、そういうのは。

「どうってことない、という顔ではないな。
すまなかった」

『あ、謝らないでくださいよ』

しゅんと弱気な顔になられるのはどうも苦手だ。

『いいんですよ。ほら、畑仕事もなかなか楽しいじゃないですか』

「A…あぁ、君は本当に優しいな。
次は君の行きたいところに連れて行こう」

行きたいところ、か…色々ある気もするけど。

『私は、煉獄さんとならどこでもいいかな』

と、私を見て突然黙り込む煉獄さん。
どうしたんだろう。

「…まつ毛に泥がついているな」

『本当ですか』

払ってあげよう、と目を閉じさせられる。

まぶたに指がそっとのったと思うと、
なぜか唇に柔らかい感触。

『れっ、煉獄さん！？何を…』

「すまない、嘘をついた！…君が可愛くてな」

子供みたいに歯を見せて笑う煉獄さん。
余裕なように見えて、どこか照れたようでもあって。

そんな笑顔が私の心をきゅっと掴んで離さない。

「ん？A、大丈夫か」

煉獄さんは、私の気持ちを知ってか知らずか顔を覗き込んでくる。

自由で眩しい彼には、絶対敵わない。

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