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竈門炭治郎.落花 ページ35

『この花、なんて言うんだっけ』

知らないわけじゃないんだよ、よく見る花だし。
ただ、この雪に映える真っ赤な花を見ると思いつく名前はふたつ。

『牡丹か椿か』

「あぁ、それは椿だよ。ほら、牡丹は春の花だし」

『そっか。詳しいんだね炭治郎』

「あと、牡丹は花びらが落ちるけど椿は花ごと落ちるって、聞いたことないか?」

目をやると、ちょうど花のひとつがぽとりと落ちた。
あっけない終わり方にもの寂しさを感じる。

炭治郎はその花を両手で包んで拾い上げた。

「散るときまで綺麗な形を残しているのって、すごいと思わないか」

『そうだね』

地面に花が咲いたのではないかと錯覚する。

「きっと散ったあとも忘れてほしくないんだな、こんなに美しかったんだって」

呟く横顔に、わずかに哀しみが漂った。
慈悲深い紅い瞳を覗き込んでしまう。

「A…?どうかしたか」

『ううん。そういうのって、人間に似てるよね』

「俺もそう思うよ。…こういう雪の日は、色々思い出してしまう」

炭治郎は、まだ少年だ。

少年なのに、強い。
こんな少年が、これほどに強くあっていいのかと思うくらい。

乗り越えてきたものが、きっと違う。

『炭治郎はすごいや』

「なんだ、いきなり」

『ずっと頑張ってきたんだね。今も、ずっと』

「俺はそんなに立派じゃない。
ただ自分の声に正直に生きてきたら、こうなったよ」

俺は心の声が大きいから、と笑う。

炭治郎といると、たまに泣きたくなるんだ。
そういう人の気持ちが分かる。

あまりにも優しくて、綺麗だ。

『私にも炭治郎を護れるかな』

「Aが俺を?…そうだな、仲間だからな」

雪が弱まってきた。

『仲間として、だけじゃなくて
…この先鬼のいない世界がやってきたとして
それでもずっと一緒に居てくれませんか?』

我ながら回りくどい言い方だ。

「鬼のいない世界…か」

『それを迎えるためにも、私は炭治郎を護りたい』

「だったら俺もAを失うわけにはいかないな」

彼のような優しい人には、刀を振るのより落花ですら大切に掬いあげる姿が似合うと思った。

雪を被り、耐えられなくなった椿がまたひとつ落ちた。

冨岡義勇.慣れていく→←☆ 我妻善逸.すれちがって



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いのり(プロフ) - みなさんお久しぶりです作者のいのりです!最近更新頻度かなり落ちてて申し訳ないです。今は長編メインで書いているのでこっちの短編は息抜き程度で書くことになると思います。リクエストは受け付けていますのでぜひお願いします!!いつもありがとうございます (2021年8月12日 23時) (レス) id: a2d88c155e (このIDを非表示/違反報告)
シルビア☆姉貴 - いのりさん» 善逸をもう少し増やして欲しいです!!!!!!伊黒さんで過保護。お願いします。 (2021年6月17日 23時) (レス) id: 769a4deb70 (このIDを非表示/違反報告)
シルビア☆姉貴 - いのりさん» 伊之助…………、可愛い…………。(///ω///)リクいいですか!?(?_?)獪岳(人間時)でツンデレ。かまぼこ隊のヤンデレ。お願いします。 (2021年6月17日 23時) (レス) id: 769a4deb70 (このIDを非表示/違反報告)
澪凪(プロフ) - 伊之助ので、夢主が看病してもらう話いいですか? (2021年6月12日 21時) (レス) id: 279a2ef6a9 (このIDを非表示/違反報告)
吹雪 - 千寿郎君で、花火大会。お館様の妹で過保護お願いできますか (2021年5月31日 21時) (レス) id: 1d6f0bde69 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:いのり | 作者ホームページ:http  
作成日時:2021年5月16日 9時

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