好きで溢れて【鬼滅の刃_短編集】

煉獄杏寿郎．キスの日 ページ18

※現代軸


『へぇ〜』

「A、携帯をじっと見てどうした？」

向かいで頬杖をついているのは恋人の杏寿郎さん。

『えと、なんでもないよ…』

携帯をいじっていると、今日はキスの日だということが分かった。
だから何？って話なんだけどわざわざ言うのもなぁ…

「ふーん、キスの日、か」

『ひぇ、覗かないで！？』

気づけば杏寿郎さんの顔が間近にあって携帯を落としかける。

そのままぷちゅっと唇が重なった。

『ちょっと、』

「うん？そういうことではないのか」

『そういうことってどういうこと！？心臓に悪い…』

「Aはキスが苦手だな！」

分かっててしないでほしい。
あと苦手というか、やっぱり恥ずかしい。

「でも、俺は好きだ」

『知ってる…』

首の後ろに手をまわしてまたねだってくるので顎を掴んで拒否する。

「どうしてそんなに嫌がるんだ」

『なんでそんなにしたいの…』

「恋人だからだ！」

すっぱり言われても。
というかさっきごはん食べたばっかりなの勘弁して。

「本当は毎日したいくらいなのに、俺はずっと我慢していたんだぞ…？」

ついこっちが甘くなってしまうのを分かって言っている。
この人ずるい。

手が緩んだのをいいことに、また口付けられる。

頬や首にも唇が当てられくすぐったい。

「…体がびくびくしているな、可愛い」

誰のせいだと…。気を抜くと吐息混じりの変な声が出る。
そんな私を見て杏寿郎さんは満足げに笑う。
だから嫌なんだ。

「そんなに悔しければ、君からもすればいい」

『悔しいって…』

言われてみれば悔しいのかもしれない。
いつも良いようにされているのは私のほうだから。

『じゃ、目瞑って』

彼は虜になるような綺麗な顔を突き出し、私のキスを待つ。
金の髪をかきあげると、そっと唇を重ねた。

本当にしたのか？と聞かれてもおかしくないくらい
控えめで軽い口付けだったので満足していないかもしれない。

が、予想には反して杏寿郎さんは顔を赤らめていた。

「…ありがとう」

『照れないでくださいよ、こっちも恥ずかしいんですけど…！？』

「ふふ、君からも良いな。不慣れな感じが愛い」

『不慣れとか言わないでください』

せっかく頑張ったのに馬鹿にしてるのかな…

「拗ねる君も愛い！」

嬉しそうにほっぺにキスをしてくる彼。

まぁ、こんなにしてくるのもきっと今日だけだから
受け入れてやらなくもないが。

私も多分、こうしているのは好き。

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