好きで溢れて【鬼滅の刃_短編集】

煉獄杏寿郎．乾かない髪 ページ1

『ただいま』

家につくとすぐに杏寿郎くんが出迎えてくれた。

私たちは鬼殺隊の仲間で恋人。
さっきまで任務だった。

「おかえり、A…って、大丈夫か？どうしたんだ！」

『なんてことないよ、ほとんど返り血だし』

「しかし、その髪…」

『鬼に斬られちゃって』

正確に言うと髪を掴まれたので自分で斬った。

「そうか…その、なんというか、もったいないな」

彼は私の髪が好きらしい。

いつも綺麗だと言って撫でてくれる。

『すぐ伸びるよ。
体汚れてるから、お風呂入ってくる』

「うむ、いっておいで」


いきなり短くなった髪は違和感こそあれど
正直洗うのは楽になる。

そこまで見た目に頓着してもいないし。

でも

『長い方が好きだった？』

「いや、短いのもとても魅力的だと思う！
第一、Aはどんな髪型でも似合う」

『ありがとう』

そう言ってはくれるけど、杏寿郎くんはどこか不満気だ。

まぁ、好みはあるから仕方ないよね。

『うーん、洗うのも乾かすのも楽だし、ずっとこの長さでもいいかな』

「えっ」

『ふふ、やっぱり長いのがいいんじゃん』

「良い、ということではなく…
君がそうしたいのなら俺は何も言わない、ただ…」

『ただ？』

そこで彼は照れくさそうに頬をかく。

「君は、髪が乾くまでずっと寝ないで話しているだろう？
でも、その…短いと、すぐ乾いてしまうから…」

辿々しく話す杏寿郎くん。
だんだん声が小さくなっていく。

「その、寝る前の時間が好きなんだ…」

『そういうことなの？』

なんだその理由、可愛すぎる。

「にやけているぞ」

『だ、だって…ふふ、何もそんなことで』

「俺にとってはけっこう重大だ…」

耳まで赤い。

私の恋人はどうしてこう可愛いのだろう。

『じゃあずっと起きてよっか』

「本当か？それは嬉しいな！」

『可愛い杏寿郎くんのためなら』

「かわ…？それはAの方だろう」

真剣な顔で返されるのも可笑しい。

「俺は二十歳なんだぞ？成人男性」

『分かってるよ。そういう問題じゃないし』

ちゃんとかっこいいと思ってるよ。でも
いくつになっても杏寿郎くんはきっと可愛い。

宇髄天元．納涼大作戦→

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