力の行く末 ページ25
スピーカーから聞こえるBFの声量は、その側に居る私が吹き飛ばされそうなぐらい大きかった。もはや音割れに近い。…いや、これは本当に彼の声"だけ"だろうか?
「……っおい、コレどうなってんだよっ!」
スピーカーの側に居たピコ君の声がした。そっちに顔を向けると、苦しそうな表情をしながら両手で耳を塞いでいた。
「お前アイツに何した!余計なモンまで増幅させてんじゃねぇだろうな!?」
「私はただこの魔術に対抗するものしか掛けてないわ!ーーっきゃあ!」
後ろのスピーカーから聞こえる声に吹き飛ばされ、今度こそ倒れてしまう。曲はまだ続いていて、音量は小さくなるどころかもっと大きくなっていく。
その音に比例して、会場全体に張り巡らされていた魔術からピシ…、という音が聞こえてくる。このままいけば…、いや、相手の魔術が壊れるのは時間の問題だろう。けど……。
「…っ、うぅ……っ!」
とうとう耐えきれなくて自分も手で両耳を塞いでしまった。頭が割れるように痛い。下手をすれば聞いているこっちの頭が壊れそうだった。
これは、異常だ。やっぱりBFだけの声じゃない。私が託した魔力が増幅し過ぎて、魔術だけじゃなく逆に私たちにまで実害が出てきてしまっている。
これ程の規模だとBFの身も危ない。だが、この状況では彼の無事を祈る事しか出来なかった。
「Ahーーーーーーーっ!!!!」
「っ…!」
今までで一番大きな声が響き渡る。それは耳を塞いでいても鼓膜が破れそうな程の大音量だった。そして、その声と共にパキンッ!という音が響き渡った。
耳を塞いでいた手を戻し倒れていた体を起こしてBFの方を見てみると、彼は少し汗ばんでいて肩で息をしていた。周りを見てみると観客たちは相変わらず盛り上がっている。その代わり、魔術を使っていた男を称賛する声は聞こえなくなっていた。
「最終戦の集計が終わりました」
スピーカーから司会者の声が聞こえた。ついさっきまでの、BFのあの声を間近で聞いていたせいか司会者の声が小さく聞こえる。
どうやらBFの最後の一声で最終戦が終わり、集計も終わっていた様だ。
「結果を発表します!優勝者は…コチラ!」
モニターに映ったのはBFだった。画面いっばいに彼の姿が映し出され、その下の方に「winner!」という文字がある。
彼は見事に相手の魔術を打ち負かし、そして優勝を掴んだのだ。
(…あぁ……)
感動と嬉しさが胸の内を満たしていく。自然と目尻に涙が溜まっていった。
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作者名:適当でぽよぽよ | 作成日時:2021年7月25日 18時