臆病と信用の紙一重 ページ23
「いいぞー!」
「ホンキ出してるって感じ!カッコいい!」
周りの声を聞くと、白髪男に関するコメントが大きな音となって聞こえてきた。あれだけ酷かったラップなのに、周りの皆は真逆の事を言っている。おそらく、あの男が使ったのは"人々を認知させる"魔術だ。会場の人達の様子を見れば一発で分かった。
「……、オイ」
スピーカーの横で凭れかかっていたピコ君から声が掛かった。目線も私の方を向いていた。
「分かってるわ。でも、これは流石に…」
「お前ん所、随分強大なんだろ?」
彼の言わんとしている事は分かった。私の力でこの状況を何とかしろと言っているのだ。
「ええ…。でも私はパパやママみたいに何でも出来る訳じゃないわ…。それにこれ程の大きな物、私一人だけじゃどうしようも…」
何とかしたいのは山々だが、私の力が及ばないせいでどうする事も出来ないのだ。
続ける言葉を見失っていると、ピコ君は分かりやすく顔を顰め、溜息をついた。
「…お前は、一人じゃないだろ」
「……」
その言葉に私は驚いていた。確かに、私だけじゃどうしようもないなら誰かに協力を仰げばいい。考えもしなかった。
……けど。
「"一人"じゃ出来ないんだろ?なら"二人"でやりゃいいんだよ。何の為にアイツはお前の側に居るんだよ」
「けど、それは彼に何があるのか分からないのよ!?」
この状況下で協力を仰げるのは、BFただ一人。けど、"人間"であるBFに協力する方法に問題がある。
今出来るのは、 "人間“のBFに自分の魔力を預けて増幅して貰い、その力を利用して相手の魔術を打ち破る方法しかない。けど、その魔力を"人間"のBFに明け渡る事で何があるかわからない。最悪死ぬ事だって有り得る。
自分では何も出来ない、でも彼に頼らなければこの状況を打破できない。けど、もしもの事があったら…。
「お前はアイツのこと信用できないのかよ」
「っ…!そんな事ないわ!」
信用していない訳じゃない。私はBFの事を守りたい。だから彼に危険を背負わせたくないだけだ。
「ならやれば良いじゃねえか。この状況を何とかしたいんだろ?」
(それはそうだけど…)
もし…、もし……。
「ーーこういう時に信用しないでどうすんだよ」
(……!)
ピコ君はもう話す気が無い様で、目線を白髪の男に向けてしまった。
…彼の言う通りだ。今信用しないでこの状況をどうするのか。
決意の決まった私はBFに声を掛けるべく、不安で俯いていた顔を上げて声を張り上げた。
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作者名:適当でぽよぽよ | 作成日時:2021年7月25日 18時