幸せなひと時 ページ11
BF:今日も遊ばないか?
GF:ええ 喜んで!
BF:じゃあどこで待ち合わせる?
GF:いつものトコで!
BF:オッケー!ならいつもの時間帯にそこで
GF:わかったわ
手元にある携帯電話のメッセージをチラチラと執拗に確認する。それをかれこれ数十分はしていると思う。何処か落ち着かなくて、水晶に映し出されている内容を確認してはまた電源を落とし、電源をつけてはまた見直すを繰り返す。
何も今日が初めてじゃ無い。寧ろ何回も同じ事をしてきた。そうしている内に、彼から来るメッセージがただの誘い文句ではなくて、デートしたいという意味合いに気付いたのは少し前の話だ。勿論、それはいい思い出の一つだ。
期待に胸が膨らみ、ソワソワとしたもどかしい感覚を覚えている一方で、心の端っこにポツリと、罪悪感に似た後ろめたい何かがある。
…何となく予想はついている。BFに会う度に、パパやママに「『仕事』をしてくる」と言わなければならない。そして言えば言うほど心臓を鷲掴みされて握りつぶされそうな感覚に陥るのだ。
「お待たせ!」
不意に、男性にしては高い声が聞こえてくる。顔を上げてその声がした方向に向けると、予想通り水晶越しに連絡を取り合っていた彼が居た。
「ごめん、待たせたか?」
「いいえ、私も今来た所なの」
デートだと言うのに、いつもと変わらない服装に安心する。それが彼らしいのだ。
「ん。じゃあ行こっか」
エスコートされる様に、優しく手を握られ引っ張られていく。それに愉悦を感じながら、BFに導かれるままに足を進めて行った。
何処にでもある様な、それでもBFにとっては行きつけであるドーナツ屋で買い物をして、近くにある公園のベンチに腰掛けた。
デートの内容としては、自分達の好きな食べ物を買っては色んな所へ行って食べると言うものだ。側から見れば恋人同士のする事にしては物足りないのかも知れないが、BFも私も満足しているし、何よりこれが私たちなりの愛情表現の仕方なので、とやかく言われる筋合いは無い。
彼の好きなドーナツを食べながら横を盗み見すれば、幸せに満ち溢れている顔をしている彼が見えた。
(可愛い…)
ラップをしている時はとてもカッコいいのに、好きな物を食べている時の顔は、まるで純粋な子供の様だ。けど、それがまた良い。
私は、手に持っていた分を食べ終え、次のドーナツのある箱に手を伸ばした。
ーー今の自分の危うさを忘れる程に、私は喜びで満ち溢れていた。
10人がお気に入り
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:適当でぽよぽよ | 作成日時:2021年7月25日 18時