初めての私の「仕事」 ページ1
「可愛い我が娘よ。"人間"という種族は、私達"悪魔"の僕にしか過ぎんのだ」
パパがそう言う。私はいつもの様に頷いた。
「あら、ダディー。そこまで言わなくてもこの子ならちゃんと理解してくれるわ。ねぇ、私の可愛い娘ちゃん?」
ママは私の事を抱きしめながらそう言ってくる。
「ええ、分かってるわ。パパ、ママ。"人間"は私達の僕。私はその人間を攫いに行く、でしょ?」
「流石だ!我が娘よ!」
「嗚呼…、こんなに立派になって…。私嬉しいわ!」
パパも私の事を抱きしめる。ママは抱きしめる力をもっと強くする。私も同じ様にして抱き返した。
この世界は、"人間"達が暮らしている世界の理(ことわり)が通用しない。"人間"は私達"悪魔"の僕であり、それ以上の価値になることは無い。
そんな世界に住んでいる私達一家は、『この世界』ではかなり高い地位にいる存在であり、実力もある。
今日、私はこれから"人間"の世界へ行って僕にする為の人間を攫って来る。これは私だけでなく『この世界』に住む"悪魔"全員がする事。勿論パパやママも同じ事をして来た。
「ああ、そうだ。娘よ。」
「何、パパ?」
「"天使"には気を付けてな」
「くれぐれも見つからないようにね。貴方を亡くしたら、私達…」
"天使"。それは私が産まれる遥か前、紀元前の時代にまで遡り、私達"悪魔"と対立してきた存在。向こうは「人間の為」と言いながら"悪魔"を根絶やしにしようとして来る。
文明が発達した今でも争いは絶えず、"向こう側"は私達を殲滅しようと襲いかかって来る。抵抗できないこともないけど、戦闘に特化した彼らに簡単に勝てる訳がない。
私自身、親の血を受け継いでいるから最低限の護衛術でもかなりの威力は発揮できるけれども、それでどうにかなる程相手はヤワじゃない。実際、人攫いを職業としていた親戚や、戦闘に特化した衛兵達が帰らぬ人となっているのは何度も聞いた。
「心配しすぎよ、パパ、ママ。要は見つからなければいいんでしょ?大丈夫よ。任せて」
自分で攫って来た"人間"は、自分の自由に出来る。ペットの様にして扱っても良いし、召使いの様にこき使っても構わない。
「そうか…」
「気をつけて行ってらっしゃいね!」
「ええ!行ってきます。パパ、ママ!」
うまく事を成し遂げた暁には、パパもママも大喜びしてくれるだろう。そのことに少しだけ浮かれつつも、これから行く先は危険な場所なのだと気を持ち直した。
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作者名:適当でぽよぽよ | 作成日時:2021年7月25日 18時