【呪術廻戦】地獄を、貴方と【夏油傑】

16話＿急降下 ページ18

……本当は今すぐ、殺したかった

でもまだ我慢、舞台設定も大事だから

『そうだ、高専に行こう。家もいいけど、呪術師が沢山いるところがいいよね』

フラフラと、歩く

足取りがおぼつかない、なんだかゾンビになったみたいな感覚だった

『……あ』

「チッ……なんだ、うわっ汚ぇ……」

知らない人と、ぶつかる

……舌打ちされて、そのまま転ぶ

痛い
痛いから、やり返さないと

相手を真っ直ぐ見つめる
『……術式、発動』

相手の体を砕く

周囲の、1人の女から悲鳴が上がった
よくもまあそんなに大きな声が出るものだ

女の金切り声を皮切りに、周囲の人間が悲鳴をあげて逃げ惑う
なんだか少し面白い

『＿＿ふ、ふふ、あはは』

声を出して、笑う

笑顔で、街を歩く

どうしよう、とっても楽しい
足取りが軽くて、先程までゾンビみたいだったのが嘘のようだ

高専まで歩こうと思ってたけど、なんだか面倒になってきた
もう、ここでいいかな
ふと、街を見る

……渋谷の街並みだ
いつの間に、こんなところまで歩いてきていたんだろう

どうでもいいか、そんなこと


とりあえず、ひとつ
この街に太陽でも落とそうかと手をふりかざす

私の術式は、本来ならそんなことできないはずだけど
今は嘘みたいに体が軽い
この街に傷つけられた、と思うだけで、きっと、きっとできる


『……きれい』

朝焼けの中で、歩道橋の上
人の群れを見る

かざした手を、振り下ろそうとして＿＿







私の腕は、静かに人混みへ腐り落ちた

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