となりの

・ ページ10

(Y)

撮影も終盤に差し掛かり、最後にローラースケートの体験をさせてもらえることになった。

楽しいなー、と話しながら専用のエリアへ向かう。

簡単に安全に関する説明を受けてから、ローラースケートの置いてある倉庫へ向かった。

「こちらになります」

倉庫にはスケート靴を始め、多種多様なボール、靴、テーピングやらラケットやら、ものすごい量の備品が置かれていた。その一番手前に、箱に何足かまとめてスケート靴が置かれている。

「こちらのお靴を履いていただいて、ヘルメットをつけていただいてのご使用になります」

「わかりました」

「ではこちらでお靴を履き替えていただいてよろしいですか？」

「わかりました、すみませんついでに着替えもしても大丈夫ですか？」

「勿論です」

「ありがとうございます」

シラハンが応対をしてくれる。

そのまま、俺らは大はしゃぎして汗でビシャビシャの服を着替えることにした。

「あーマジで楽しいなここ」

「ね、来てよかったわ」

朝からテンションの高いカラスとりょうがニコニコしている。

たわいない話をしつつ着替えを終え、靴を履き替えている時だった。


ばち、と急に電気が消えた。


「え！？？！？！？」

りょうが驚いて大声を出す。

「ちょ」

「え？」

「みんな平気？」

「おう」

慌てて安否を確認するシラハンに応える。

「カラスは？」

返事がない。

「カラス？」

真っ暗な中をそろそろ膝立ちで移動し、カラスがいたと思われる方へ向かう。

「っひ、ふっ…」

荒い呼吸音に、嫌な予感がする。

「カラス？大丈夫か？」

「っひ、やっ、ひぁ、やだっ、はあっ」

「カラス？俺だよ、ゆうま」

これやばいな、と思いあわてて近寄る。

やはり、過呼吸になっているらしい。

「ゆ、ま、ひ、はっ、やだ、ふっ、はっ」

「大丈夫、大丈夫やけ、ほら」

目が暗闇に慣れ始めたのか、体操座りで顔を覆うカラスが見えた。

隣へ行き、背中をゆっくりとさする。

「ほら、吸って、吐いて、吸って、吐いて」

「はひ、ひゅ、ふっ、ひ、ふっ、」

背中が跳ねる。

「はい、深呼吸」

「ひゅ、ふ、ひ、ふぅ、はっ、ふ」

だんだん呼吸が落ち着いていく。

大丈夫、大丈夫、深呼吸して、と繰り返して背中を撫で続け、再び電気がつく頃にはカラスは疲れ切って眠ってしまっていた。

・→←04 SLH-K

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す