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(ron)
ようやく嘔吐がおさまって、便器の蓋に頭を投げ出す。
「りおん、もう落ち着いた?」
「はい…」
「心当たりは」
「あります…」
「そうですよね君は働きすぎです」
「はい…」
申し訳なくて居た堪れなくて、顔を上げられなかった。
「ねーりおん、アナタシアで踊るの楽しい?」
「はい…」
「じゃあ歌うのは?」
「楽しいっす…」
「他の仕事は?」
「楽しいっす…」
もちろん、どれも楽しい。
仕事以外のゲームとか、トレーニングとかも、全部楽しい。
でも。
「忙しいは言い訳になると思うけどね」
芝健さんの言葉に思わず顔を上げる。
「いやなんて言うか、責任があるとかないとかそういうことじゃなくて、まず大事なのは体調でしょ」
ぐうの音も出ない。
「そりゃあ他の仕事を言い訳にして仕事されないのは困るけどさ、だからといって体調崩すまで仕事させる気はないし」
その通りだ。
僕は、楽しいことをなんでもやって、全部において一人でみんなと同じことをしようとすることこそを、我慢しなきゃいけなかったのだろう。
「こっちだってできる範囲で協力するし、素直に言ってね」
じわっとまた涙が出た。
ん、と芝健さんがまた背をさすってくれる。
すんません、ごめんなさい、と呟く声が震えた。
なんとか涙を止めて、よろよろしながら自室に戻ると、まりんさんが作ってくれたのであろうお粥が机に乗っていた。
食欲はないが、胃は空っぽだし、とてもありがたく感じた。
「…いただきます」
背中を丸めて少しずつお粥を食べる。
スプーンを口に運びながら、さっき芝健さんに言われたことを反芻していた。
確かに自分は忙しいと言う自覚も、疲れていると言う自覚もあったのだ。
それでも、仕事をやらない事が自分への甘えのように感じて、無茶をしてしまったのだろう。それが1番やってはいけないことだと気づけずに。
お粥を食べ終わり、キッチンへお皿を戻す。
まりんさんにありがとうございました、と伝え再び部屋へ戻る。
布団に入って、ぼんやり天井を見つめた。
自分に甘えないように、みんなには甘えてみることにしよう。
疲労と眠気で回らない頭でぼんやりそう考えてから、僕はそっと瞼を閉じた。
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ななつぼし(プロフ) - ササ(っ´ω`c)ササさん» レスが大変遅れてしまい申し訳ございません。ご愛読、コメントありがとうございます。承知致しました!只今制作している分や他の方のリクエスト等も考えると、続編に掲載する事となるかもしれませんのでご承知おきくださいませ。(その場合でもなるべく早く制作致します) (2021年6月18日 20時) (レス) id: c00734f652 (このIDを非表示/違反報告)
ササ(っ´ω`c)ササ - 今日、初めてこの作品を見つけて、感動しました!リクエスト良いでしょうか?アナタシアと、SLHが一緒に集まっている時で、カナタさんとRYOさんが体調が悪く、倒れてしまい、それぞれのメンバーに看病されるお話がみたいです!これからも頑張ってください! (2021年6月16日 21時) (レス) id: 83cde4d631 (このIDを非表示/違反報告)
ななつぼし(プロフ) - Archangel Michaelさん» レスが大変遅れてしまい申し訳ございません。ご愛読、コメントありがとうございます。承知いたしました!只今制作している分の量によっては、続編に掲載することになるかもしれませんのでご承知おきくださいませ(続編に移行する場合でもなるべく早く制作いたします) (2021年6月13日 23時) (レス) id: c00734f652 (このIDを非表示/違反報告)
Archangel Michael - この作品を初めて見ましたが、とっても良い作品だなと感じました!リクエストよろしいでしょうか?私はカナタさん推しなので、カナタさんが、立ち踊りで、NGを多く出してしまって、無理して頑張ってしまい、倒れてしまう感じのお話が見たいです!よろしくお願い致します (2021年6月11日 21時) (レス) id: 83cde4d631 (このIDを非表示/違反報告)
ななつぼし(プロフ) - rhioapne_bell.さん» リクエストありがとうございます。承知いたしました!書かせていただきます。 (2021年6月11日 18時) (レス) id: c00734f652 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ななつぼし | 作成日時:2021年5月25日 17時