酸いも甘いも (ページ2)

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ミヅキ：まぐろページ2

ベッドがきしむ。

「・・・ん」
思わず声が出る。

「・・・ここ？」
「や、もちょっと・・」

優しく指でなぞられる。

「あー！！そこそこ！」
「だあぁ！もうええやろ！俺も疲れるわ！」

額に浮いた汗をぬぐいながら言い捨てられた。

「ずっとデスク座ってたら背中こっちゃって。
鮪、マッサージ上手だからさぁ。
バンド解散したら整体師とかやったら？」

笑いながら、冗談のつもりで言ったのに

「解散はしぃひんよ」
って真顔で真剣に答えられて
ちょっと申し訳なくなった。

「俺らまだまだやからさ」

KANA-BOONの話をする鮪はいつもキラキラしてる。

小さい背中の、丸い肩に揺れる毛先が私と同じシャンプーの香りを放った。

「好きなんだね」
「ん？」
「メンバーとか、KANA-BOONのこと」

「せやなぁ」って伸びしながら立ち上がって

冷蔵庫からペットボトルを出しながら
こちらを見ずに話続けた。

「次の新曲な？」
「新曲出るの！？」
「んー、聞く？まだ誰にも聞かせてないねんけど」

黙って飲みかけのグラスを差し出されたから
素直に受け取ってぐぐっとのどに押し流した。

「メンバーにも？」

よく冷えたお茶がのどを伝っていくのがわかった。

「うん」
「生演奏？」
「もちろんでございます」
パンッと手をたたいてすり合わせた後、
ギターを持ってきてあぐらをかいて、
私の隣に座った。

「この曲な、たぶんCDにはならんから、1回しか歌わんから、
よーく聞いてな」
「え？」
「俺な、メンバーも大事やけど、もっと大事にしたいものもあってん。」

ふう、と一息ついて、ひゅっと息を吸い込んだあなたの肩が温かくて。
長く伸びた前髪から少しだけのぞく
丸い目が泳いでる。

ふふ、と笑ったら
なん？って緩んだ口元で睨まれたけど
ぜんぜん怖くない。
どこ見てるのかよくわからないけどちらと見えた白目がとても綺麗だったので
わたしはそっと目を閉じた。

｢この曲だけはリスナーは1人おったら充分やから、｣

左斜め上から降ってくる独り言に、きっと、しあわせなんだ、わたし、と納得した。