154．あの頃に、戻れた気がした(Nside) ページ21
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今日が花火大会の日だということは、分かっていた。
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時計の秒針の音だけが鳴り響く部屋。
この、静かで暗い空間にも慣れた。
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──･･･もうそろそろか…。
時計を見つめながら、そう思っていた時だった。
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──･･･ピンポン
滅多に鳴らない音がまた鳴った、と思って立ち上がろうとすると。─･･･そこに居た人物が、ドアを強く叩いて話し出した。
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雅紀「おい！いるんだろ！頼むから開けてくれ！」
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…………相葉？
あの頃と比べて声は少し低くなっているものの、すぐにその正体は分かった。
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ガチャ、とゆっくりドアを開く。と、
雅紀「……おい、お前、なにぼぉーっとしてんだよ。」
─･･･勢いよくドアが開かれて、そこにいた相葉は肩を上下に揺らして、酷く息切れしている様子だった。
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和也「……え、」
雅紀「……ここに、A来たんだろうが。」
和也「なんでお前、」
雅紀「お前に泣かされたAが持ってた紙切れに、ここの住所が書いてたんだよ。」
和也「…………。」
雅紀「………お前に何があったのかは知らねえけど…お前だけじゃねえんだよ……っ」
和也「………っ」
雅紀「……あいつだって、あいつだって苦しんでんだよ！あいつはずっとお前を想って泣いてたんだよ！！！！」
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こんなにも、人のために必死になる男を
見たのは初めてだった。
─･･･プツン、と自分の中で何かが切れる音がした。
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和也「相葉、お前……」
雅紀「屋上にいる。毎年、あそこで花火見てる。」
和也「……屋上…、」
雅紀「…………分かるだろ。お前を、ずっと待ってんだよ。」
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ぐっと拳を握りしめた。
何年も前の自分に戻ったような感覚だった。
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和也「………俺、行ってくる、」
俺は、戸締りもせずに家を飛び出した。
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作者名：向日葵
| 作成日時：2016年4月17日 13時
