58.浮気宣言 ページ9
最近、たいこうが甘えてくる。
甘えるのは俺の特権だったはずなんだけど。
まぁ、たいこうとは元々仲がよかったし、矢花に甘えられるより俺のところにきてくれる方がいいから別に構わないんだけど。
それになんだかんだいったって、みんなと同じ。俺にとってもたいこうは弟みたいなもの。なにかあるなら俺だって力になりたいし。
そんなわけで、俺、今野大輝。たいこうと浮気します。
とはいっても、別になにかするわけじゃない。ただちょっと矢花との時間をたいこうにまわすだけだし、それに嶺亜がいうには俺はいるだけでいいらしい。
それなら俺にもできるかなって、けっこう気楽な気持ちでいたりして。
だから、特に用事はないけれど、今日は矢花の隣じゃなくってたいこうの隣。
「…あのさ」
「ん〜？」
「もしかして、矢花とケンカした？」
思いがけない問いかけにきょとんとしてしまう。
え？ なんで？ なんでそんなことになってんの？
わけわかんなくて、目をぱちくりさせてると、
「…ごめん」
って、謝るたいこうに初めて気づいた勘違い。
矢花となんかあるたびに、矢花をとられたくなくて、いつもたいこうの所にきてたから、今もそれだと思われてたみたい。
やっぱり俺は甘えられるより甘える方があってるってことなのかな。
だけど、それだとなんかちょっとカッコ悪いから、ほんの少しお兄ちゃんっぽく。
「大丈夫。ケンカしてないよ」
「ホントに？」
「うん。いまはたいこうといたい気分」
「…」
あれ？ 照れてる？
─────────────────────────
嶺「こんぴとケンカした？」
矢「してないです。してないです」
嶺「ホントに？」
矢「ホントです。ホントですって」
嶺「ふ〜ん。それならいいけど」
矢「大丈夫です」
嶺「もし、傷つけるようなことしたら、わかってるよね」
矢「はいっ。わかってますっ」
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作者名：すもも | 作成日時：2020年4月24日 20時
