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56.チョコレート・キス ページ7
「ちゃんとキスくらいできないと。してる？」
いつだったか何気ない会話の続きに投げかけられた嶺亜くんの言葉が聞こえたような気がして、俺は辺りを見回した。だけど、そこには嶺亜くんはいなくって、きょとんとした顔をしたこんぴがいるばかり。
「矢花、どうかした？」
「ううん、なんでもない」
「そ」
特になにかするわけじゃなく、ずっとおしゃべりするわけでもないけれど、こんぴといると穏やかに流れる時間。時々こんぴはうたた寝なんかして、かわいい寝顔をみせてくれる。俺はというと隣で好き勝手なことをして、そういう時間を楽しんでいる。
今日のこんぴは、さっきまで眠そうにしていたのにすっかり目が覚めたのか、おいしそうにチョコレートを頬ばっている。チョコレートが大好きだから、こっちが妬けるくらい幸せな顔をして。
「好きだね」
「うん。好き」
にっこり笑う唇には、チョコレート。
「!?」
「…ごめん。俺も食べたくなった」
きっと今、俺も真っ赤な顔してる。
────────────────────────
今「不意打ちずるい」
矢「ごめん」
今「いるならいるって、いってくれたらいいのに」
矢「うん。ごめん」
今「いるの？」
矢「うん」
今「じゃあ、はい。あ〜ん」
矢「…」
今「矢花？」
矢「そういうことじゃないんだけど」
今「？」
矢「こういうこと」
今「!?」
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作者名：すもも | 作成日時：2020年4月24日 20時
