55.好きは時に残酷で ページ6
「あのね、嶺亜のなにが好きってね」
会えば必ず聞かされる、琳寧の好きな人が好きな嶺亜さんの好きなとこ。
好きって気づく前までは、嶺亜さんのどこが好きって聞くのが楽しくて、琳寧もそうだよねって話してた。
だけど、最近すごくツライ。
それはきっと琳寧も嶺亜さんが好きだから。
嶺亜さんのいいところ、いっぱい知ってて、嶺亜さんが強がりなところもいっぱい知ってて、ずっと琳寧が嶺亜さんを支えてあげなくちゃって思ってきたから。
だけど、琳寧の嶺亜さんへの好きはどちらかというと先輩とか友達とかの好きで、それ以外の気持ちで琳寧が好きになったのは、嶺亜さんが好きな克樹。その上、嶺亜さんも克樹が好き。だから、どんなにがんばっても琳寧に勝ち目はない。
いっそのこと嶺亜さんをキライになれたらって思うけど、そんなことできるわけないし。克樹への好きも捨てられない。
それでもこうやって克樹の話を聞いてるのは、少しでも克樹とつながっていたいから。
好きって気づいたあの日から、克樹には絶対に伝えないって決めたこの気持ち。
それがどんなにツラくても、それ以上に好きだから。
「ねぇ、聞いてる？」
「うん。聞いてる」
にっこり笑えば笑ってくれる。
この瞬間だけは、嶺亜さんが好きな克樹は、琳寧の克樹。
────────────────────────
今「ねぇ、やっぱ琳寧って嶺亜のこと好きだと思うんだけど」
矢「まぁ、好きだとは思うけど」
今「違うの？」
矢「ちょっと違うかなぁ」
今「たいこうはどう思う？」
大「ん〜。以下同文」
今「なんだよ、それ」
矢「まぁ、まぁ」
今「まぁまぁって、なんか俺だけ仲間外れじゃん」
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作者名：すもも | 作成日時：2020年4月24日 20時
