ut視点 ページ24
ut視点
ひどく寒い。
扉の先は照明が切られていて薄暗く、尚且つ吐息すら凍りそうなほどに冷えきっていた。
「空調働いてないんか……」
「冷凍庫みたいやな」
……死体の保管場所だから？
浮かんだ考えを追い出して、僕たちはクレナイを探すため歩き出す。
抗菌タイルに花崗岩の二重壁。
更にドアを抜けた先にあったのは、宇宙船だった。
「完成してたんやな……」
薄々勘づいてはいた。
二人の分の資材を集めないとな、と言ってクレナイが買い付けたのはカプセル分だけだったから。
普段の襲撃を危なげなく捌いてみせたクレナイが弟を失うほどの脅威なんて、反応炉の起動を感知したレイダーたちの襲撃ラッシュしか考えられなかった。
二人分のカプセルが並んだ、小さな宇宙船。
その片方に……彼の弟が眠っているのだろう。
カプセルの前でうずくまるクレナイは、元々限界だった精神にサイコドローンでとどめを刺されてしまったらしい。
「……ごめん」
「俺じゃなかったら」
「うん、そうだよな、ごめんな」
幻聴でも聞こえてるのか？
ぶつぶつとうわ言を繰り返す様子が痛々しい。
「クレナイ！大丈夫か、なあ！」
「聞こえてへんみたいやな」
シッマが腕を掴む。
「うわっ、めっちゃ冷えとるやんけ！お前いつからここにいてん……」
僕は精神波遮断ヘルメットをクレナイに被せた。
ないよりはマシやろ。
シッマの言うとおりクレナイの身体は危険な程に冷たい。
このまま放っておくという選択肢はあり得ない。
「シッマ。捕まえてでも連れて戻らなこいつ死んでまう！」
「OK,D！悪いなクレナイ！ふーん！！！」
意識を失ったクレナイを担いで宇宙船区画を後にする。
最後のドアが閉じるとき、ヒヤリとした冷気が首筋を撫でたのが不快だった。
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生姜(プロフ) - まうるもちさん» 感想ありがとうございます！頑張って書いた甲斐がありました！ (2020年2月26日 22時) (
レス) id: fe71aaf4f1 (このIDを非表示/違反報告)
まうるもち - 読みやすくて面白かったです！ありがとうございました！ (2020年2月26日 22時) (レス) id: a48c43d4d7 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：生姜 | 作成日時：2020年1月12日 22時
