紫陽花四朶 ページ4
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「……真面目に申し上げますと、悟様と夕顔さんはまだ仲が深まっていないので、ずっと一緒に居てあげることが……」
私がそう申しあげて、悟様の方に顔を上げたとき、彼が窓外を惚けたようにご覧になっていた。
私も見ると、その小さな体よりも小さな折り畳み傘を差し、肩口を濡らして、紫陽花を丸い目をキラキラと輝かせて見る夕顔がいた。
鼻頭を赤め、可愛く嚔いている。
私には一歩も二歩も譲るような"愛らしい"姿だと思った。
「お、日向じゃん」
悟様は暇乞いもせず、席を外された。
暫くすると、窓外に悟様が現れ、夕顔を無下限の内側にいれ、雨からお守りなさっていた。
無下限に弾かれた雨雫がこちらの窓に打ちつけられて飛び散った。
窓掛けが緞帳で窓枠に切りとられた光景が舞台のようで、何だか2人を見せ付けられているような気がした。
最強な悟様と弱い夕顔がお似合いだなんて決して思わないけれど。
今更そんなのが許されるはずがない。
彼の隣に立てるのは彼と同様に強いものだけであるはずだ。
例えば、私、なんて気持ち悪く驕り高ぶったなことは決して言わないし、思わないが。
机には私の練り切りの食べかけと悟様の伽藍堂な皿だけがあった。
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作者名:陽毬 | 作成日時:2022年8月11日 21時