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稀有の駄々 ページ7

本当に稀に彼は駄々をこねる時がある。

特にこれと言って面倒ではない、のだが。




『…ショッピさん』


「嫌」


『まだ何も言ってないです』




これは非常に困ったぞ。

彼はずび、と鼻を鳴らした。所謂風邪である。




『人手が今日足りないんだって、だから私休めないの』


「じゃあ俺も行きます」


『病人は寝てなさい』




さっきからこれの繰り返しだ。

いつも乗っている電車はもう出発して、ギリギリセーフで会社に着く電車はあと少しの猶予しかない。


私の腰に抱きついて離れようとしない彼に困ってしまっていると、ポケットに入っていたスマホが鳴った。




『あ、先輩』


「A今日はショッピ君は仕方ないのは分かるけど、絶対来るんやで、ええな!!?」


『はいぃ…!』




最近遅刻してばかりだから先輩も焦っている。

私は彼の腕を振り払って行こうとしたが力をグッと入れられて布団の中に引き込まれた。




『ちょっとショッピ!私本当に行かなきゃ…』


「付いていきます」


『はい!?』




君話聞いてたのかな!?


フラッと彼は立ち上がって玄関に向かおうとするが壁伝いのためにひどく遅い。




『ショッピ、ちゃんと寝て…!』


「連れていかないならAが家を出た後自力で行きますから」




……今、車で2人で行くか、ここに置いてって彼がなんらかの事故に遭う可能性を高めるか。




『…もーっ!絶対会社には入らないで車で待ってること、薬をちゃんと飲むこと、寝ること!!良い!!?』


「ふふ、はーい」




彼は後部座席で横になったのを確認して発車する。




確実に遅刻は確定だが…なんとか会社に着くことができた。

車を降りる前に彼の方を見る。




『昼食休憩の時にここに一回戻ってくるからね』


「あ、まってください…」




何、と振り返るとさっきよりも顔が近くて驚いていると彼はん、と目を瞑った。




「いってらっしゃい」


『…行ってきます』




マスク越しに唇を重ねた。

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作品ジャンル:恋愛
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メイヴ - もうとっくに完結してしまっていますが、この作品に出会えて本当に良かったと思います!面白いし、私の大好きなケンカップルのお話で最高でした! (2022年8月22日 5時) (レス) @page17 id: 88bf36ee26 (このIDを非表示/違反報告)
チョコ - 青年Aさんの寄生人がなくなってしまったから悲しいです。規制があったのでしょうか? (2021年8月6日 20時) (レス) id: 061ad38b1c (このIDを非表示/違反報告)
チョコ - めっちゃこの作品好きです。 (2021年8月6日 20時) (レス) id: 061ad38b1c (このIDを非表示/違反報告)
すみれいん(プロフ) - 青年Aさん» すみません!お返事遅くなりました○¬ してますしてます!してなくても読んでいる作品もあります! ぁ、覚えてくれているんですね照れます。自分のコメの実は双子でした!を見ていまだにニヤニヤしてます! (2021年4月2日 21時) (レス) id: 6ac43c38eb (このIDを非表示/違反報告)
青年A(プロフ) - すみれいんさん» ありがとうございます、そう言って頂けて良かったです…!すみれいんさんは確か他の作品でもコメントを下さった方だと記憶しています。…すみれいんさんが覚えていなかったら少々恥ずかしいですが。どうぞどうぞ脳内で妄想を展開してくださいませ! (2021年2月28日 21時) (レス) id: 071d1f2325 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:青年A | 作者ホームページ:***  
作成日時:2020年9月3日 20時

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