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鍵。arym ページ2

ありやま

ピーンポーン―…
インターホンの音が響き渡る。
鳴らしてから1分くらいが過ぎても、返事は無かった。

「…おかしいなぁ。今日、朝行くって言ったのに……だいちゃんてば。」
俺は仕方なく合い鍵を取り出す。
この合い鍵はいつだかだいちゃんが
『ん、持っとけよ。』
と渡してくれたものだ。
でも俺はなるべく合い鍵は使わない様にしている。
何となく恥ずかしいのと
インターホンから聞こえるだいちゃんの嬉しそうな声が好きだから。

インターホンを鳴らす度に「鍵渡したよな?」なんて確認されるけど、だいちゃんもドアを開けるのは嫌そうじゃないから良しとする。

でも今日こそこの鍵を使うときがきたようだ。
「入るよー?」
一応声をかけて、部屋に入る。
それでも応答は無い。
本気で心配になってきたその時、
「ぅ…んー…」
聞き慣れた声が、意外と整理整頓されたリビングから聞こえた。
リビングに置かれた、黒いソファーを覗き込むと、
すやすやと寝息を立てるだいちゃんが居た。
最近は前よりもっとバラエティーやドラマに出演しているから、疲れていたのかもしれない。
たまに「ぁー…」とか「ん…」とか唸り声を上げて寝ているだいちゃん。

いつもお泊まりしたときは俺が寝るまで寝ないでくれるし、寝起きが悪いと評判のだいちゃんだけど俺が起きると『もー起きるの』とか『もうちょい寝よーぜ』とか腰に手を回してくるから
こうやってすやすや寝ているだいちゃんは滅多に見られない。

だから起こさず観察してみることにした。
ほっぺをつついてみるとむず痒そうに眉をひそめて、また元の寝顔に戻る。
「ちょっと…可愛い、かも。」
しばらくほっぺをつついたりしていると、だいちゃんの目が薄く開かれ、寝ぼけた目で俺を見ると、今度は大きく見開かれた。
「おはよーだいちゃん。よく寝れた?」
「ちょっ…、おまっ、何で…!?」
だいちゃんは焦ったようすで時計を見ると、約束の時間がとっくに過ぎているのに気づいたのか、「悪いっ」手を合わせた。

一人分空間が出来たソファーに腰掛ける。
「つか、来てたんなら起こせよ…。」
「だってだいちゃん良く寝てたから」
何となく肩に頭をよせると、だいちゃんの匂いがした。
この臭いも、寝顔も、声も、
全部が、大好き。
なんとなく今なら素直になれそうだなと思って

「だいちゃん、俺だいちゃんのことすげー好きだわ」

滅多に口にしない言葉を紡ぐと
隣でゲホゲホとむせる声がした。

作者より。→←バレた。tkin



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作者名:いちにーぜろぜろ。 | 作成日時:2019年9月28日 13時

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