ご令嬢、黄緑を拾う ページ6
「お父様！私、この子が欲しいわ！」
この時、A10歳、初めての悪役らしい我儘を言う。
＊＊＊
時は少し前に遡る。
私、A・ヴェルメリオは早くも10歳を迎えようとしていた。正直人生2回目だしなんとかなるだろうとは思っていたが、"元の器"が良いせいかなんでもそつなくこなせることが出来た。そしてそれを元大人が頭を使ってやるのだから上手くいかないわけが無い。
つまり、私は齢10にも満たないうちに親が計画していたであろう教育を全て終わらせてしまったのだ。勿論ダンスやら音楽やらの教養という部分においては訓練するしかないのでそれは続いているけれど。
「お嬢様、ご主人様がお呼びです。書斎にいらっしゃいます。」
「今行くわ。教えてくれてありがとう。」
「い、いえ……！」
わざわざ子供部屋まで呼びに来てくれたメイドさんにお礼をいえば驚いて狼狽えたので苦笑いが出そうになる。ここまで大人しく生きていたはずなのに何故こうも私の行動に対して敏感になるのか想像もつかない。
……え？私、大人しいよね……？あれ、常識の大人しいとはもしかして基準が違ったか？そんな不安を覚えながら父の書斎へ向かいノックをする。
「お父様、Aです。」
「入れ。」
「失礼致します。」
向こう側から父付きの執事が笑顔でドアを開けて出迎えてくれたが肝心のお父様はしかめっ面で正直今すぐにでも逃げ出したい。
それにしても顔はお兄様に似て――この場合お兄様がお父様に似ているが正しいのか？――端正な顔をしているのだからもっと笑えば印象も変わるはずなのに勿体ないなあ。
「A。」
「はい。」
「今度、お前の10歳を祝う誕生祭が行われる。」
「はい。」
「……何か、希望はあるか？」
「希望、ですか？」
そんなん急に言われたって困るだけですけど、と言いそうになるのを飲み込んでにっこりと微笑んでから「昨年同様で構いません」と言い切ればお父様の眉間に更にシワがよった。え、なんで。
「昨年同様、だと？」
「はい、お父様。私は親しい方々にお祝いして頂ければそれで構いませんわ。私、静かな方が好ましいのです。」
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 292人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「wrwrd」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
タラコ - ヘルマンさんってもしかして、ヘルマン・ヘッセでしょうか？ (2021年2月14日 22時) (
レス) id: d000e7e9d5 (このIDを非表示/違反報告)
笹森 糺(プロフ) - → ご迷惑をおかけし大変申し訳ございませんでした。これからも何卒よろしくお願い致します。 (2021年2月3日 12時) (レス) id: efe832d826 (このIDを非表示/違反報告)
笹森 糺(プロフ) - → 名前変換を反映するためには1番上の『●お名前』とその下にございます『苗字、あだ名の設定が可能(設定する)』の2項目からそれぞれ設定して頂かなければならないようです。 紛らわしいため登場人物設定は撤去致しましたのでその様にご対応頂きたく存じます。→ (2021年2月3日 12時) (レス) id: efe832d826 (このIDを非表示/違反報告)
笹森 糺(プロフ) - もえさん» もえ様 コメント頂きありがとうございます。ご迷惑をおかけ致しまして申し訳ございません。動作確認致しましたところご指摘いただいた通り登場人物設定では反映しないことを確認しております。大変申し訳ございませんでした。→ (2021年2月3日 12時) (レス) id: efe832d826 (このIDを非表示/違反報告)
もえ(プロフ) - 私の占ツクがおかしいだけでしたら申し訳ありません。登場人物設定において「オルテンシア」と「テン」が設定されていると思うのですが、そこを変更させても本文内で反映されません……。 (2021年2月3日 7時) (レス) id: 9b854a058e (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：笹森 糺 | 作成日時：2020年12月20日 23時
