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貴方のことが嫌いだ。
私は心の中でそう叫んだ。
表情には出さないように、それでも目一杯大きく叫んだ。
嫌いだ、なんて行き過ぎた物言いであることは自分でも分かっているのだ。
けれど、そうでもしないと、私の心にのさばるこの卑屈な想いは消えてくれる気がしなかったのだ。
『上手くいくといいですね。』
口から出した本心とは正反対の感情に自嘲する。
「ありがとうございます。」
変わらず河村さんは照れたように言う。
この後、彼は、私の好きな人は、私の知らない誰かに想いを伝えるのだ。
姿形も知らない、ただ話に出てくるだけの素敵そうな人に。
この人はとても優しい人だから。
私はここで彼に好きだと伝えることは出来ない。
きっと気に掛けて、悩んでくれるから。
私は出来ることなら、彼を困らせるようなことはしたくなかった。
『ここまで相談乗ったので、結果は教えてくださいよ。』
私は全力で、心の内に気付かれないよう必死でからかうような意地悪そうな笑顔を取り繕って言った。
そうでもしなければ、壊れてしまいそうだったから。
結局、私の恋は想いを伝えることなく、終わりを迎えた訳である。
ついにあの日以来初めて、河村さんと２人きりになる時間が訪れてしまった。
「Aさん。」
『……何でしょう。』
私は河村さんの少し浮き足だったような、明るい雰囲気で、告白の結果がどうなったのか、分かってしまった。
「告白、成功しました。」
『それは良かったですね。おめでとうございます。』
好きな人が他の誰かとお付き合いをすることとなる。
それが事実となり降りかかって来て、この前以上に苦しい気持ちを味わう。
それでも私は必死に表情を作って、そう言った。
「Aさんのおかげです。」
『いえ、それは河村さんの頑張りだと思います。』
「……ありがとうございます。緊張しましたけど、言い切った甲斐がありました。」
時々照れたような表情をする河村さんが、私はとても嫌いだった。
それはもう、反吐が出るほど。
その後、河村さんが嬉々としてその旨を話してくれたが、私の耳には殆ど残らなかった。
それでも私は河村さんの話を最後まで聞いた。
それは相談に乗った者のさだめでもあるし、彼を好きになった心の我儘でもある。
玉砕したというのに、まだ恋心を殺せない私は明らかに馬鹿でどうしようもなかった。
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蒼衣瑠璃(プロフ) - [作者の独り言]ひとまず、完結まで持っていくことができました。読んでくださっている皆様、本当にありがとうございます。 (2019年7月5日 22時) (
レス) id: 9b47b20b96 (このIDを非表示/違反報告)
蒼衣瑠璃(プロフ) - さくらさん» コメント、ありがとうございます。短編集の方からとは、ありがたいです。短編の方では書けなかった部分も書けたらいいな、と思っています。今後ともよろしくお願いします！ (2019年7月3日 23時) (レス) id: 9b47b20b96 (このIDを非表示/違反報告)
さくら(プロフ) - 中編として出されたんですね！(短編集から来たものです)どの作品も本当に面白く、更新楽しみにしています！！これからもお願いします！ (2019年7月3日 22時) (レス) id: 5f0271f313 (このIDを非表示/違反報告)
蒼衣瑠璃(プロフ) - 茶之助丸さん» コメントありがとうございます。中編ですし、ストーリーはもう決まってますので、バシバシ更新していきたいです！今後ともよろしくお願いします。 (2019年7月3日 0時) (レス) id: 9b47b20b96 (このIDを非表示/違反報告)
茶之助丸(プロフ) - ランキングおめでとうございます！お話すごく好きです！更新楽しみにしてます。頑張って下さい！ (2019年7月3日 0時) (レス) id: 1cdd5a0197 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：蒼衣瑠璃 | 作成日時：2019年7月2日 0時
