日常と非日常の小話【短編集】

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『もし、私が出なかったらどうするつもりだったんですか』

「僕は君が出るまで居座る予定だったので」

　驚くべき発言に、私は耳を疑う。

『今日中に出るとは限らないじゃないですか』

「次の日もその次の日も行く予定だったので」

河村さんの目の色に、私はその言葉の意志の堅さに気付く。

『すぐに出て正解でした』

私がそう言えば、河村さんはそうですね、と返す。


「後もう一つ。僕は君が回復したら伝えることがあるので」

これも覚悟しておいてください、と河村さんは言った。

『……分かりました』

優しい雰囲気に乗った言葉の強さに、私はそう言う他なかった。






　それから、私は河村さんはじめ、友人たちやメンバーらの力を借りて、少しずつ回復していった。

河村さんが私を訪ねてきたあの日から、私は別人のように回復に努めた。

以前と同じほど食べれるようになったし、レポートやQuizKnockの記事も書き始めた。



　そして迎える今、河村さんがあの日と同じように私の家を訪ねてきた。

「そうですね、Aさん。伝えなければいけないこととお説教、どっちが先が良いか選びます？」

異様な２択に私は狼狽えるも、どうやら河村さんはどちらを先に話すのか既に決めているらしかった。

「……そうですね、黙り込むなら伝えなければいけないことを先にお話ししましょう」

河村さんはきっと私が黙り込むのを見込んでいたのだろう。

『……はい』




「僕は君のことが好きです。気付くのがアホほど遅かったですけど。君を失うのが怖くて何日も訪ねるという覚悟をするほどには」

　私はその言葉を聞いた途端、目頭が熱くなるのを感じた。

抑えようとしても無理なようで、涙は次から次へと流れ落ちる。


『私、実は……っ、相談乗っている、とき、から。……河村さんの、こと、すき、だったんです』

溢れる涙に任せて、長くの間、胸に秘めた想いもさらけ出す。

「……すみません、僕が拙いばかりに」

河村さんは、あの日と同じように、けれどあの日よりも力強く私を抱きしめる。

『いえ……、そんなこと、ないです』

途切れ途切れになってしまっている私の言葉を、河村さんは聞き取って、優しく私の頭を撫でる。

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