だいじょうぶ ページ28
「今戻った」
「……おかえりなさい…？」
明らかに低い拓哉の声に、伊沢くんが敏く反応するのが分かる。
「どっか開いてる部屋ない？」
「あー、あそこなら」
特に事情も聞かず、ただ質問に答えてくれる伊沢くんは良い子だな、なんて心の隅で考える。
「A、行こ」
その声と、私の背中を支える手がものすごく優しい。
「泣いていいんだよ」
部屋に入って私が座った途端、拓哉に前から抱きしめられる。
その温度と感覚の懐かしさに突然に涙が込み上げてくる。
小さい頃も、こうやって慰めてくれたんだったっけ。
私が思いっきり泣けるように。
堰を切ったように溢れ出る涙が止まるまで、拓哉はそうしてくれていた。
「落ち着いた？」
優しい声色で問いかけてくる拓哉に私は首を縦に振って答える。
『……拓哉あったかいよね。落ち着く』
熱を求めてすり寄れば、私を抱きしめる拓哉の体が一瞬驚いたように固まるも、すぐに笑い声が聞こえる。
「僕だからって、ちょっと危機感無さすぎない？」
クスクス、と笑う声に私を和まそうとしてくれている雰囲気を感じる。
『まあ、拓哉になら何されてもいいかなー』
落ち着いたことを示すようにおどけて、だけど少しだけ本心も込めて言ってみる。
「……言ったな、A」
私の言葉を聞いた拓哉が悪戯をする直前かのようにニヤッと笑った。
途端、白い指に顎を掬われる。
鼻と鼻がくっついてしまいそうな距離に整った顔があり、顔が熱くなる。
『え、ちょ……た、くや…？』
完全に頭がこんがらがってしまっている、どうすればいいのか、何と言えばいいのか全く分からない。
「そんな反応されると期待しちゃうんだけどな」
口許に当たる息がくすぐったい。
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翔。(プロフ) - 更新されているところまで読ませていただきました！すこし仄暗いかんじで大好きです！！気が向いたらでいいので更新お待ちしております、、 (2019年10月4日 0時) (
レス) id: 7366e8991b (このIDを非表示/違反報告)
蒼衣瑠璃(プロフ) - [作者の独り言]僕の書く小説には山森さんが登場しがちです。仕方ない、好きなんです。 (2019年7月6日 11時) (レス) id: d8cfcd1bd9 (このIDを非表示/違反報告)
蒼衣瑠璃(プロフ) - [作者の独り言]伊沢さんがイチャイチャしてればいいのに。と言っているのは、２人がオフィスでは節度を守った範囲で行動してくれる。という信頼があるからだ、という裏設定があったりなかったり。 (2019年7月1日 22時) (レス) id: 9b47b20b96 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：蒼衣瑠璃 | 作成日時：2019年4月6日 23時
