仰げば尊し ♪美崎高校吹奏楽部のバラード (ページ9)

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放課後の屋上には、相変わらず麻雀牌の音が響いていた。青島が牌に手を伸ばす。

何もない、平穏で無為な時間。
だけど、仲間たちと一緒に過ごすこの時だけが、青島にとって無意味な学校生活を唯一満たしてくれるものだった。

その時、勢いよく屋上の扉が開く音がした。
何事かと目をやると、そこには見知らぬ高齢の男の姿があった。肩で息をしている。

誰だ、あのジイさん。

『誰？』

見知らぬジイさんは、怒りの形相でこちらへ近づいてくる。

男「これを捨てたのは誰だ！」

なるほど、そういう奴か。

タバコを吸っていると、たまにいるのだ。正義感ぶって注意してくる面倒な大人が。

青島「さあ？」

青島は首をかしげ、とぼけてみせた。

まあ、ジイさんだからな。殴って追い返すわけにもいかねぇし、穏便にお引き取り願おう。

男「タバコを投げ捨てたのは、誰かと聞いてるんだ」

なおもジイさんは迫ってくる。

あれ、なかなか引かねぇな？
ジイさん、そろそろ落としどころだせ。さもないと……

高杢「ああ、なんか文句あんのか？」

高杢がジイさんにすごんだ。

……そう、こうなるんだ。
まったく、高杢。相手はジイさんだぜ。
まあでも、我慢はできねぇよな。俺らの邪魔する奴は……

青島はポケットからタバコを取り出し、ライターで火をつけた。深く吸い、挑発するように、ジイさんに向かって煙りをはく。

ジイさんは唖然とした。それを見ていた木藤良と天月が、こらえきれず笑いだした。

男「は、早くそのタバコ、消しなさい。未成年者の喫煙は、法律違反だ！」

なおも迫ってくるジイさんを、高杢が「うるせぇし！」とキレて突き飛ばした。

ジイさんがよろけて倒れる。置いてあった空き缶や椅子が屋上を転がった。

青島「ジイさん。ここじゃあ、俺らが法律なんだよ」

『分かった？』

青島はそう言って、吸っていたタバコの箱を掲げてみせた。

そう、ここでは俺らが法律だ。誰も俺らを止められない。
真面目な生徒も、教師も、校長さえも。
まあ、このジイさんは部外者なんで、それを知らなかったようだが。

青島は、呆然とするジイさんを見下ろした。

青島「行くぞ」

満足して仲間に声をかける。屋上を出ようとした。安保、桑田、高杢の三人も彼の後ろに続く。

それを見て、木藤良と天月も荷物を持ち歩きだした。

男「ちょっと待ちなさい！」

振り返るとジイさんが、よろけながらも立ち上がる。