歩む道。 〜With a lot of love〜

34 side Nissy ページ34

すべての仕事を終えてみんなで談笑してると
ふとAの姿が見えないことに気づく。


レコーディングブースに佇むAを見つけて
もう何年も一緒にいるのに
その横顔に見惚れた。



スウェーデンに来てからのこの数日を思い返す。



ブランクなんて感じさせないくらい
Aの仕事は変わらず絶妙だったと思う。

仕事とプライベートはきっちり分けたがるし
前と変わっていてわからないところはちゃんと確認をとる。
立場の上下関係なく、常に謙虚なところも変わらない。


Aは、あの頃の速水のまま
だけど
俺への理解度は当然確実に上がっていて。

Aと仕事をした今日までの数日間。
すごくすごく、楽しかった。



そして、やっぱり
仕事をしてるAはキラキラしてた。



ほんの少し残っていたAとまた仕事をしたい、マネージャーに戻ってくれないかという未練のようなものが心の中で燻って。

でも。

それは今じゃないって理解してる。




そんな色々を伝えたくて
ぼんやりしていたAに声をかけた。




何をしてるかと問えば、見納めだと言う。
少しさみしそうに笑って、楽しかったと言う。

出来上がりを楽しみにしてる、という言葉に自信を持っていいものができると思うと即答した。


だって、チームのみんなの力の結晶で
Aと一緒に作り上げたものが
いいものにならないはずがない。



そんなことを考えてると
俺をじっと見てるAと視線がぶつかる。




西「なぁに、そんなに見つめちゃって。もしかして惚れ直した？」

「そういうことにしといてあげます。」




図星って顔をされて可愛くない返事。
世界中で俺しか知らないその表情。


愛おしくてたまらなくて
思わず抱きしめた。



西「俺は、惚れ直した。」



一緒に過ごした年数を数えたら片手では足りない。



たくさんのことを乗り越えて今ここにいる
Aを愛おしいと思う気持ちは増え続ける。



そしてさっき言いかけたことを言おうと口を開くと、
レコーディングブースのガラスをこんこんとノックする音。


振り返るとチームのみんながニヤニヤしながらこっちを見ていた。




慌てて俺から離れて距離を取るAは真っ赤になっていて。

そして俺はため息をつく。





「ったく、もう。今日はタイミング悪い…。」

ス「打ち上げ行きますよー。」

「はいはい。」



そして俺達は
このスタジオをあとにした。
心の中でまたここに来れることを願って。

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