20 side Nissy ページ20
西「大丈夫?」
膝の上できつく握られた手の上に自分の手を重ねると、かすかに震えていた。
体を寄せて、もう片方の手でゆっくり背中をさする。
Aは長い息を吐きながら俺の手に自分のもう一つの手を重ねた。
「ごめん、大したことじゃ、ないの。」
西「うん。」
「ただ、えっと、あの。」
西「いいよ無理して話さないでいいから。
それより、調子悪いならホテル戻る?
戻るなら俺も一緒に…。」
「大丈夫!
せっかくの食事会なのに、西島さんがいないなんてだめです。私も少し落ち着けば大丈夫だから。」
目を閉じ、深呼吸を繰り返して、
そして少し水を飲む。
それがたぶん、Aが心を落ち着かせるためのルーティン。
Aは、定期的に通院はするものの、もう薬を飲むことはやめていた。
敢えて聞いてはいないけど、きっといつか迎える俺たちの未来を考えてくれてるからだと俺は思っている。
西「わかった。
じゃあ、少し落ち着くまで一緒にいる。」
俺はAのとなりのカウンターチェアに座り手を繋いだ。
手が思ってたよりも冷たい。
俺の温度を分けたくて指を絡めてきつく握りしめる。
「だめです!誰に見られるか…。」
西「大丈夫。俺たち結婚してるんだよ。
隠す必要なんてないんだから。」
「でも…。」
西「いいんだって。むしろ公表して回りたいくらい。俺の嫁さん、かわいいでしょって。」
「なんかそれ、昔も同じようなこと言ってた気がします。」
西「そう?
じゃあ、昔も今も俺はAが大好きだってことやん。」
そう言うとこわばっていた表情が少し柔らかくなって口元に笑みが浮かぶ。
「ありがとう、たか。」
冷たかった指先がだんだんぬくもりを取り戻して、同じくらいの体温になる。
西「どういたしまして。」
隣を見ればAがいて
誰よりも俺を必要としてくれる。
Aが助けを求めるのは俺だけ。
その事実が嬉しいだなんて
ちょっと歪んだままの俺の愛情。
それを知っていてまっすぐ受け入れてくれる、
そんなAが俺にとっての唯一の存在だ。
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(´・ω・`)(プロフ) - 大好きな人は。めちゃくちゃ素敵で何度も読み返してます!できたら、ショートのパスワード教えて欲しいです。 (10月29日 7時) (レス) id: e27e13d6a3 (このIDを非表示/違反報告)
ぽ - 大好きな人は。とてめ素敵なお話でした(^^)♡こちらの作品も1から全て読みたいです!パスワード教えて頂けると嬉しいです!! (2022年11月22日 1時) (レス) id: 7929bd4039 (このIDを非表示/違反報告)
eringi01030214(プロフ) - 先日読み終えたのでいまから見させて頂きたいと思ったらパスワードかかっていたので教えていただきたいです(;;) (2022年11月21日 3時) (レス) id: ea8392449b (このIDを非表示/違反報告)
りりり(プロフ) - 今から読ませて頂きます♪1から全て読みたいのでパスワード教えて頂きたいです!!! (2022年11月11日 9時) (レス) id: 6961cbc2a1 (このIDを非表示/違反報告)
eight888loooove(プロフ) - 大好きな人は。読ませて頂きました!ステキなお話で一気読みしてしまいました^ ^他の作品も読ませて頂きたいです!パスワード教えて頂きたいです。 (2022年11月5日 7時) (レス) id: 17095d27b5 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:リリィ | 作成日時:2020年5月27日 7時