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徹「俺は…Aさんが好きです。

あれから、時間が経つほどにもっともっと
Aさんが好きになった。

触れた感触が忘れられなくて、
何度もあのときのことを思い出した。

あの21時のアラームがなって、
西島さんがくるまでの数分。
確かにAさんは俺のものだった。


この手のなかに…
いたんだ。」



ぼんやりと私を見る徹くんの目が
どこか虚ろで、
その目に見えるものは
あのときの私なのかもしれない。


そう思ったら、
胃の奥からこみ上げるような
吐き気がして、思わず口元を押さえて座り込む。



西「聞くな!こんな話聞いちゃだめだ!」



徹「忘れなくちゃいけないと思っても、
出来なくて。
思いだけが募って。

仕事もやめて、
何もすることがなくて。

自分には何もない。


いや、
Aさんを思う気持ち以外に何もなかった。」



よろよろと立ち上がったたかが
私を抱え込むように抱きしめる。


西「A、動けるよな?
誰か人を呼んできて?

ここから離れるんだ。」


耳元で小さな声で私にそう言うたか。


たかを置いていけない。
首を横に振る。


西「あいつは今普通じゃない。
わかるよな?」




エレベーターまで走れ。



たかは
小さなうめき声をだしながら、
私の両腕を掴んで立たせる。


今度はたかが私をかばうように立つ。



西「そんなことない。

何もないはずない。
ちゃんと前を見れば、絶対に何か見つかる。」



目を覚ませ、と言うたかに。




徹「そんなこと、できない…。

だから、
俺は俺を終わりにするしかないんだ。」




そう言って、
徹くんはその手のカッターナイフを自分に向ける。




「だめっ!」
西「やめろっ!」



徹くんを止めようとした
私とたかの声が被る。



徹くんを止めなくちゃ。



それしか考えれなくて必死で。


私はたかの背中から飛び出して
徹くんの手からカッターナイフを
取り上げようとした。


徹「離せっ…!」
「そんなのだめ!」
徹「もういいんだって!」
西「Aっ!」



「…っ!!」



何が起きたか
よくわからなくて。



西「Aっ!!」



右の肩の下なのか、腕なのか、
そのあたりに。


一瞬の熱さと、
その後に続いた鋭い痛み。



徹「A、さ…ん…?」



カシャンとコンクリートの床に落ちたカッターナイフには血がついていた。

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作品ジャンル:恋愛
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リリィ(プロフ) - fukaさん» 出逢えてよかったって言ってもらえてとても嬉しいです。書いてよかったです!ありがとうございますー★ (2020年4月12日 15時) (レス) id: 79af705402 (このIDを非表示/違反報告)
fuka(プロフ) - 完結お疲れ様でした! 前作から読ませていただき、何度も涙がこぼれました。切なさや悲しさ、喜びなど、たくさん感動したりして、すごく素敵なストーリーだったなと思います! 終わってしまって寂しいですが、この物語に出逢えてよかったです! (2020年4月5日 22時) (レス) id: 0f2ddad342 (このIDを非表示/違反報告)
リリィ(プロフ) - Yuiさん» ありがとうございます☆頑張ります! (2020年3月31日 10時) (レス) id: 79af705402 (このIDを非表示/違反報告)
リリィ(プロフ) - ゆにしぃさん» コメントありがとうございます!また読見に来ていただけるようにますますがんばります! (2020年3月31日 10時) (レス) id: 79af705402 (このIDを非表示/違反報告)
ゆにしぃ - 長編お疲れ様でした!このstoryは本当に大好きです!!(side story楽しみにしてます!) (2020年3月29日 12時) (レス) id: 2657bef5db (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:リリィ | 作成日時:2019年12月1日 8時

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