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かなさんの手が
カウンターの上でぎゅっと握りしめていた私の手に重なった。


体のあざも傷も少しずつ消えつつあった。


でも、ロープで結ばれていた左手首のあざは
変色してはいるものの、まだ色濃く残っていて
それが見えていた。



「聞いて、もらえますか?」



そう言った時、
お店の奥の方から子供の泣き声がした。



拓実「あ、起きちゃったな。俺見てくるよ。」



お願いね、とかなさんは言って私の方を向く。



かな「ゆっくりで、いいよ。ちゃんと聞くから。」


かなさんのその言葉に頷いて、
私は自分の身に起きたことを話し始めた。


ストーカーのようなことをされたこと、
髪を切られたこと、
たかとのことをばらすと脅されたこと、
プロポーズされたこと、それを受けたこと。

それから…襲われそうになったこと。



その場面を思い出すと体が強張り、
指先が冷たくなる。



震えそうな体を落ち着かせようと
ハーブティーを口に運ぼうとしたけど、
手が震えてうまくカップを持てず、カタカタと音を立てる。


かなさんの温かい手が背中を撫でてくれて、


かな「辛いこと思い出させてごめん。」


横からかなさんにぎゅっと抱きしめられて、
ぽろりと涙がこぼれた。



「速水さん、って男の人に呼ばれたり、
急に声を掛けられたりとか…
腕を掴まれたりすると、
体が震えて、過呼吸みたいになったり。

あの人たちの声が頭の中で響くの。


人混みが怖い。
人の目が怖い。
外に出ることが怖い。



これじゃあマネージャーとしての仕事が
できないって西島さんは判断して、
私をスタッフから外したんです。



私…仕事が…好きなのに。
好きなのに、できなくて…。
悔しくて、苦しくて。」


涙がポロポロ溢れてくる。



社長と実彩子さんが話していたことが
引っ掛かっていたけど
LIVEを見て少しだけ前向きになれたこと。



「本来の仕事ができないまま
あの場所にいることは
やっぱりいろんな人に迷惑をかけます。

西島さんにも負担をかけるし、何よりも私は
西島さんのやりたいことの邪魔になりたくない。
だから。


ちゃんと、
今の私に残ってしまってるものを克服して
彼の枷ではなく、支えになりたい。」



そう思えるようになったから、



「だから私…。
前に進みたいからこそ。


マネージャーを、

会社を辞めようと思います。」

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作品ジャンル:恋愛
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リリィ(プロフ) - ふみさん» 今更お返事ごめんなさい!いつもありがとうございます!続き頑張ります! (2020年1月5日 20時) (レス) id: 79af705402 (このIDを非表示/違反報告)
リリィ(プロフ) - AYさん» 今更感ありありのお返事でごめんなさい(泣)読んでくださりありがとうございます!お詫びに?更新頑張ります! (2020年1月5日 20時) (レス) id: 79af705402 (このIDを非表示/違反報告)
ふみ(プロフ) - めっちゃいいとこ!!早めに続編頼みます! (2019年11月25日 23時) (レス) id: 017350f460 (このIDを非表示/違反報告)
AY(プロフ) - 本当に、ほんっとうに主人公さんの可愛さにはかなわない。というかリリィさんにはかなわない!読むのが楽しみで頑張れます。いつもありがとうです〜 (2019年11月25日 20時) (レス) id: d7256c5ba1 (このIDを非表示/違反報告)
リリィ(プロフ) - Takatakaさん» 帰ってきちゃったー☆予想通り、ですかね笑 (2019年11月25日 17時) (レス) id: 79af705402 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:リリィ | 作成日時:2019年7月11日 20時

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