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チ「仕事とプライベートの線引きって、
この仕事をしてると難しいでしょ。
私も経験者だから、
わかる。
昔ね。
自分が担当してた人と、
恋愛してたから。」
「チーフも?」
チ「そう。
でもね、私の場合は。
相手が女好きで、
私がマネージャーだからこそ、
全部バレバレで。
なのに、文句も言えなかった、
好きで、好きで。
そばにいたかったから。」
チーフは
どこか遠くを見てるような目をしてた。
「そんな…。」
そして、私に視線を移す。
チ「でも、にっしーはさ。
速水のことが
大好きでしょうがないでしょ。
溺愛っていうか、なんていうか。」
西島さんの気持ちを疑ったことなんてない。
ただ、勝手に私が不安になるだけ。
いつも、
私のこと見ててくれて。
私との未来を考えててくれる。
いつも、
仕事もAも
どっちも大事って言ってる。
思い浮かぶのは優しく笑う西島さんの顔。
そんな西島さんが好きなのに。
いつから私はこんなに、
欲深くなったのだろう。
どんどん堕ちていく。
無くては生きていけないほどに、
囚われて、嵌っていく。
ぽろぽろ流れる涙を拭えずに、
苦いビールを流し込む。
「朱里のことだけどさ。
あの時
階段から速水を突き落としたこと。
やっぱり無かったことにするべきじゃ
なかった。
それが余計に彼女のプライドを
傷つけたのかもしれない。
サブマネとしてやってきた数年間、
頑張ってきたことも何もかも、
なかったことのように仕事は回っていく。
朱里がいなくてもね。」
「私は、朱里さんにたくさん仕事を
教わりました。
だから、
今があります。」
チ「そうだね、
そういう子はたくさんいる。
あの子は誰かにつくより、
基本を教える教育担当にって
私は思ってたのに。
分け隔てなく、
丁寧な教え方をできる子だった。
嫉妬という感情は、
人を変えてしまうのね。」
「嫉妬…。」
今日の朱里さんの顔は、
私の知ってる朱里さんじゃなかった。
とても、怖かった。
チ「私はね、速水は今、
辞めるべきじゃないと思う。
自分を見失ったまま、
逃げてもいいことなんてひとつもない。
立ち止まってもいいけど。
自分で選んで、自分の道を
進むんだよ。」
「自分の道…。」
私の道は今、
どこにむかってるんだろう?
真っ白な霧に包まれたみたいに
前も後ろも見えない。
隣に西島さんがいるかどうかも、
わからなかった。
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リリィ(プロフ) - ao.aoさん» ありがとうございます!応援しただいて嬉しいです☆続編も楽しんでいただけたら嬉しいです☆ (2019年2月26日 14時) (レス) id: 79af705402 (このIDを非表示/違反報告)
リリィ(プロフ) - idmさん» ありがとうございます!5も公開しました。引き続きお楽しみいただけたら嬉しいです☆ (2019年2月26日 14時) (レス) id: 79af705402 (このIDを非表示/違反報告)
idm(プロフ) - 更新いつも楽しみにしてます!!続編も楽しみです(^^) (2019年2月23日 18時) (レス) id: 8b61c6c3c0 (このIDを非表示/違反報告)
ao.ao(プロフ) - 更新、楽しみに待ってます! (2019年2月22日 22時) (レス) id: c44633c2f8 (このIDを非表示/違反報告)
リリィ(プロフ) - Takatakaさん» コメントありがとうございます!色んな捉え方、ありますねー☆そこまでちゃんと読んでもらって嬉しい限りです☆ (2019年2月22日 8時) (レス) id: 79af705402 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:リリィ | 作成日時:2019年1月1日 14時