歩む道。4

178 side Nissy ページ28

西「じゃあ、俺も。

考えてたこと言う。」


昨日からずっと
俺だって考えてた。


西「昨日。


Aを責めるような言い方をしたこと。

あの状況では同じことが何度あっても、
俺はああ言うと思う。

でも、いろんな事情が分かった今は、
あんな言い方をしてごめんって謝りたい。」




「違います、あれは…。」



泣き顔のまま、
俺の方を向くAは、
きっと自分が悪いって言うだろう。


その言葉を遮って、話を続ける。



西「それに。


俺がAの傍にいるから、
Aは傷つく。


心も、体も。


階段から落とされて、
一歩間違えれば、
死んでたかもしれない。


道で突き飛ばされて、
もし、車が近くに来ていたら、
命を落としてたかも知れない。


今度だって、
顔に傷を作って…。



Aの傷は全部。
俺がAのそばにいるからだろ？

俺がAを手放せないくせに、
守れないからだろ？


でも、どんなに苦しめても、
傷つけても。


俺のそばにAがいてほしいって
気持ちが消えないんだ。」


自分勝手だって、
わかってる。
縛りつけてるだけかもしれない。



「西島さん…。」



情けない俺。



浮かぶのは自嘲の笑み。



西「守り切る自信なんて…。

これっぽっちもないのに、
Aを手放す選択肢は
俺にはないよ。」


心の中で渦巻く、
矛盾だらけの気持ちを言葉にして
吐き出す。



西「俺から離れたほうが、
Aは幸せになれる。



例えば長瀬さんみたいな人ならきっと、
Aを幸せにしてくれる。

穏やかで温かくて、
ちゃんとAに普通の幸せを
教えてくれるだろうね。」



俺じゃだめなんだよ。
Aのためには。


でも、
そんなの嫌だ。


わかってる。



西「俺は俺の手で、Aを幸せにしたい。


Aと幸せになりたい。


他の誰かになんて
渡したくない。」


Aは天井を見上げながら
俺の言葉を聞いていた。


Aの目から涙が流れて、
頬をつたっていく。




Aは自分のせいで俺に迷惑をかけると言う。
俺は自分のせいでAが傷つくと思う。


こんな関係で俺たちは
幸せに近づくことができるんだろうか。


だけど。


西「Aは、俺から離れたい？」


Aが、
俺から離れたいと願うのならば。


俺は、
繋いだ手を離すしかないんだろう。
別々の道を
歩くしかないんだろう。

179→←177 side Nissy

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す