歩む道。3

142 side Nissy ページ42

Aを抱き上げてソファに座らせる。



西「A。


さくらちゃんが、心配してた。
様子が変だって。」



「やっぱり、さくらさんには
バレちゃうんですよね…。」



西「何があった？」



Aの隣に座って、
手を握る。



「飛行機の中で、
また、あの視線…感じたんです。」



西「飛行機の中、で？」



「はい。


あと。
バックの中に見慣れない封筒が入ってて。


中、見たら…。」



西「まだ持ってる、それ？」


無言で頷くA。


ごめん、と一言伝えて、
Aのバックの中にあった
それらしき封筒をとりだす。



西「見ても、いい？」



また頷くA。


俺は封筒の中身を取り出した。
中身は数枚の写真。


Aの入社式の写真。
事務所でAが控えめに笑ってる写真。
前のAのマンションに入ってくときの写真。
リハかなんかで、俺と向き合ってる写真。
俺と一緒に歩いてた台湾での写真。


そして、一枚のメモ。



《私はあなたを許さない》




これ…どういうことだ？



「たぶん…。



私をこの前突き飛ばした人と、
階段からわたしを落とした人。


同じ、人だと…思うの。


手の、感触とか…
強い…嫌な感情…が

…っぁはっ…


おな…じ…」



ガクガクと震え出したAの呼吸が、
おかしくなってく。



西「Aっ！」



力いっぱい抱きしめる。



西「大丈夫。

ゆっくり、息して？

俺がいるから。
大丈夫。
大丈夫。」



「怖い…よ。





私…許さないって…




なん…で…？


やだ…怖い…


怖いよ…」



過呼吸になりそうなところを、
必死で落ち着かせようとしてるA。


とぎれとぎれの言葉。


Aを抱きしめながら、
大丈夫、俺がいるって
繰り返すしかできない。



滅多に弱音を吐かないAが
怖いと泣いていて、震えてる。



俺はAの背中を撫でながら、
なんて言えばいいのか考えていた。



西「今度は一緒に考えよう。

隠しごとしないで全部話そう、二人で。」



「でも…。」



西「俺が忙しいからとかいいたいんだろ？


それとこれは別の問題だから。」




「うん。

怖いけど…
今度はただ流されたくない。
飲み込まれていくのは、いや。」



西「うん。そだな。」



「へへっ、なんか、
大丈夫な気がしてきた。

たかがいれば、大丈夫、
だよね。」


俺の腕の中で顔を上げて、
泣きすぎて腫れた目をぱちぱちしながら、
笑ったA。

143 side Nissy→←141 side Nissy

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す