歩む道。3

140 side Nissy ページ40

眠りについたAを見つめながら、
さっきの出来事を思い返す。



見てわかるほど、
青ざめて
Aの手が震えていた。


俺には全くわからなかった、
Aの言う"視線"。



咄嗟に着ていたパーカーを頭から被せて、
外の世界を遮る。


建物の中に入って
多少は落ち着いたようだったけど、
一人で部屋に帰すのは心配だった。



怖くてたまらないって顔に出てるのに、
それを俺に言おうとしないA。



我慢なのか、遠慮なのか。



だけどそんなものいらないし、
もっと甘えてほしい、頼ってほしい。
ワガママになってほしい。


そう思うのに、
うまくそれを伝えられないもどかしさ。




西「なんでかな？」



近づいてるはずなのに、
時折感じる距離。
そこにいるのに、消えてしまいそうな
不安感。



だからなのか、
最近時々考えてしまう、
Aとの結婚。


前にAは結婚てよくわからないって
言ってたけど。


俺はいつか、
Aと家族になりたいって思ってる。



捕まえておきたい、離したくない、
俺のものだって知らしめたい。

紙一枚にサインするだけで、
堂々と外を歩ける。




そう思ってるくせに。




タイミングとか、
立場とか、
周りの反応を気にしてしまう。


影響が俺だけなら、
どんなことでも耐えられる。
でも、メンバーに迷惑はかけられない。


正解が見えなくて、
少し怖い。




深いため息をついて、
また
Aの寝顔をみつめる。




眠るAの枕元にスマホと、
だめなときは電話してくること、
とメモ書きを一緒に置いて部屋をでた。


本当は朝まで一緒にいたいけど
明日も仕事がある以上、
それをしたら結局Aが気にするから。



ちゃんと寝て、体を休めて、
明日に備える。
それが俺達の暗黙のルール、な気がする。




結局、俺の一番は仕事？



そんな考えをぐるぐると巡らせながら
いつ鳴るかわからないスマホを握りしめて、
目を閉じた。

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