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少し驚いた顔をした後
ふっと笑って、


西「俺の方が、逢いたかった。」


と言う西島さん。


目と目があって。


たった何日か離れてただけなのに、
ドキドキと心臓が音を立てる。



西「家まで送る。」



そう言うと、
西島さんは私の荷物を持って歩き始めた。


大通りでタクシーを拾い、
一緒に乗り込む。



西「話したいことが、たくさんあるんだ。

伝えたいことも、たくさん。


でも…。」



わかってる。
無理してここに来てくれてること。



「仕事、行ってきてください。

西島さんがいいって言ってくれるなら、
西島さんの家で待ってます。」


そう言うと
私の手をそっと握って西島さんが言う。


西「俺達の、だから。


Aが帰る場所は、
俺のとこ以外、あり得ないでしょ?」



帰る場所。



あんなこと言ったのに、
まだ、そうやって言ってくれるんだね。



「…はい。」



そこからは、なんとなく無言のまま、
でも、握られた手はそのままで
マンションに着く。



西「なるべく早く帰るから。」


一人タクシーを降りた私。


「無理しないでください。

でも、待ってます。」



西「うん。じゃ。」



走り去るタクシーを見送り、
玄関の鍵を開けて部屋に入る。



「…うそ?」



散らかすタイプじゃない西島さんなのに、
部屋はすっかり散らかっていて。


テーブルの上には、
仕事の形跡なのか、書き損じの紙。
くしゃくしゃに丸まってたり、
ビリビリに破かれてたり。



キッチンにはアルコールの空き缶やペットボトル。



溜まった洗濯物。



ソファに置かれたままのブランケットと枕。



脱ぎっぱなしのジャケット。



「…もう、しょうがないなぁ。」



そんなふうに言いながらも、
なんだか嬉しい。



私がいることの意味のひとつ。

そんな気がして、
この散らかった部屋すら愛おしい。




窓を開けて外の空気を取り込む。
散らばったゴミをあつめ、洗い物をする。
洗濯機を回しながら、掃除機をかける。



寝室のベッドを見れば
私の枕だけがそこにあって、
ずっとソファで寝ていたのか心配になる。



自惚れかもしれないけど、
私がいないとダメな西島さんが
部屋中そこかしこに見え隠れして、
なんだかにやける。


問題は何一つちゃんと解決していないのに、
自分が西島さんにとって必要なんだって
思えるだけで嬉しかった。

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作品ジャンル:恋愛
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リリィ(プロフ) - loversoul5296さん» うれしいコメントありがとうございます!同じ西島さん像を共有できて嬉しいです☆この先もよろしくお願いします! (2018年10月14日 22時) (レス) id: 79af705402 (このIDを非表示/違反報告)
リリィ(プロフ) - ao.aoさん» コメントありがとうございます!3もスタートしましたので、これからも楽しんで頂けたら嬉しいです!最高にいい!の言葉、すっごく嬉しいです☆ (2018年10月14日 21時) (レス) id: 79af705402 (このIDを非表示/違反報告)
リリィ(プロフ) - くまさん» いつもありがとうございます!頑張ります☆ (2018年10月14日 21時) (レス) id: 79af705402 (このIDを非表示/違反報告)
loversoul5296(プロフ) - 凄く引き込まれますね。しかし切なすぎて苦しすぎて。そんな西島さんすらかっこよすぎて(笑)現実の西島さんがどんな恋愛するのかわからないけど、リアルな西島さんに大切にして貰える女性はきっと素敵な人だろうなって。完全に私の中の西島さんはこの西島さんです(笑) (2018年10月14日 0時) (レス) id: a5209292a1 (このIDを非表示/違反報告)
ao.ao(プロフ) - いい!いい!最高にいい!幸せになってもらいたいです更新楽しみにしてます。 (2018年10月13日 11時) (レス) id: c44633c2f8 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:リリィ | 作成日時:2018年8月21日 15時

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