歩む道。2

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あの時。


西島さんが私の手を握った感触で
何となく目が覚めた。

でも。
どうしたらいいのかわからなくて、
目を開けられずにいた。


少しの間、
そばにいてやれないけど。
俺は今、俺がやるべきことをやってくる。


私の手を握りながら話すその声には
迷いが感じられなくて、
静かなのに強い響きを持っていた。



心の中でいってらっしゃいを告げたけど、
我慢しきれずに溢れた涙で
きっと起きてること、ばれちゃったな。



西島さんが出て行ったあと、
目を開ける。


思い返すのは
実彩子さんに抱きしめられてた西島さんの姿。

痛いほどに私の腕を掴んで、
俺の想いは届いてない？と問う西島さんの
辛そうな顔。


小さな嫉妬から、
どうしょうもなくバカなことを言った私。


ずっと感じてる、
劣等感。


私なんかって言うたびに、
西島さんは怒ってくれるけど、
心に残り続ける
過去の記憶。


実彩子さんみたいに輝いてる人が、
本当は西島さんには似合うはず。


どうしたら、この気持ちをなくせるんだろう？



「あ…。」



ベッドから起き上がると
サイドテーブルに置いてあった
私の腕時計の代わりに、
いつも西島さんが付けている腕時計が置かれていた。


西島さんがその時計を
とても大切にしてることを私は知ってる。


そばにいられない自分の代わりに
大切なものを私のところに置いていってくれた。



私のことをちゃんと想ってくれてる西島さんが
確かにここにいる。



西島さんがやるべきことをやると決めたなら、
私も、と少しだけ頑張れそうな気がした。



でも、不安定な気持ちからなのか
次の日から熱を出し、退院が伸びてしまった私。



結局あれから数日が経った今日、
私はやっと退院の日を迎えた。
あの、階段から落ちた日から1ヶ月弱が経っていた。


3月から4月に変わり、
チームNissyはライブにむけて、
本格的に動き出しているはず。


グループだって、仕事が詰まってる。



ちゃんと歌えてるかな？


ちゃんと寝てるかな？
ちゃんと食べてるかな？


レコーディングはうまくいった？



はやく仕事に復帰したい。
西島さんのそばで、
仕事がしたい。


久々に歩く外の空気を感じながら
頭に浮かぶのは西島さんのことばかり。



はやく、
逢いたい。

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