歩む道。

5 side Nissy ページ5

お互いに仕事スイッチが入ると
俺達は適度な距離を保つ。


相変わらず、スタッフさん受けのいいAは、
いつも誰かに声をかけられている。


そして、
それに少なからず嫉妬してる俺に
Aは気づかない。


そもそも、
Aは、鈍い。
相手が自分に恋愛の意味で
好意を持ってることに気づかないんだから、
当たり前か。


性格も良いし、かわいいし。
仕事もきちんとやるし。


なのに、Aの自己評価はすごく低い。


私なんか。
私なんて。


よくそういう言葉を聞く。


なんでなんだろ？




あーあ、あんな笑顔振りまいちゃってさ、
ほら、あのADさんのあの嬉しそうな顔。


なんかムカつく。


それ、俺のだって大きな声でいいたい。


でも。
その笑顔は俺の仕事のためだと思うと、
そんなことも言ってられない。



恋人になってから数カ月。


メンバーに言うタイミングもなく、
まだ、誰にも話せてないこの関係。


まあ、特に変わったこともないと言えばない。


付き合い始めても、あまり変わらない関係性と、
意外にAのことを知らない自分。


お互いにハードすぎて、
毎日寝るだけに帰る家。


一緒に過ごせる夜も
いつも俺の腕の中で、
疲れきって
すやすやと寝てるAが
好き過ぎて、かわいすぎて、
手がだせない。


キス以上に進めない。


1度体を重ねてるのに、
抱いてしまったら
Aを壊してしまいそうで、
怖い。


抱いてしまったら
歯止めが効かなくなりそうで、
怖い。


「はぁ…。」


知らず知らずにため息がでる。
この歳になって、こんなことで悩むなんてな。


こんなこと考えてるなんて、
Aが知ったらものすごい引かれるんじゃないか？


俺の気持ちはAにとって、
負担にならないか？
重くないか？

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