歩む道。

40 side Nissy ページ40

結局。


家を出たのは予定よりも
遅くなってしまった俺達。


俺の選んだワンピースを着たAが
あまりにかわいくて言葉を失う俺に、


「どう、ですか？」


と聞くA。


西「やっぱり、よく似合ってる。」


女の子に服を送るなんて、
初めてだった。

Aが、
俺の選んだ服を着て。
バッグを持って。
靴を履いて、アクセサリーをする。


それだけで心に湧き上がる
この満足感はなんだろう？


独占欲？
束縛？


俺の愛情は歪んでいるのか？


それでも嬉しそうに笑ってくれる
Aは、


「よかった！

ありがとうございます！」


って言ってくれる。




そして。



都内を抜け
鎌倉に向かう車の中。



「わぁー！
見て！
西島さんっ！

海！
夕日！


きれいっ！」


Aが、
窓に張り付くようにしてAが見ているのは
きれいな夕焼け。

見てって言われても、
運転してますけど。


って思いながらも
Aと夕焼けを横目で見る俺。



西「きれいだな。」


と答える俺の顔にも自然に笑みが浮かぶ。


「うんっ！」


はしゃぐAは珍しい。


だから…。


西「ちょっと寄り道しよっか？」


少しだけ遠回りして、
海が見える公演の駐車場に車を停める。


西「意外に人いないね。ラッキー。」


車から降りて、
助手席側に移動してドアを開ける。


西「はい。どうぞ？」


差し出した手を
はにかみながら握るA。


誰かに見られたら…
と、戸惑うAと
そのまま手を繋いで、
少しだけ歩く。



オレンジ色の夕日が
海に反射してキラキラと輝く。


「うわぁー。こんなの、初めて見た！」


柵に捕まって身を乗り出すAの体を
後ろから閉じ込める。

Aの肩に頭を乗せ
頬を寄せ合う。


西「これからも。

俺が、
Aにたくさんの初めてをあげるから。」


そう言って、頬に小さくキスをする。


「うん！

ありがとう、にし…

ありがとう、たか。」


たか

って呼ばれるとドキッとするんだ。

でも、Aの声で
西島さんって呼ばれるのも、
本当はちょっと好き。


「遅れちゃうから、

そろそろ行こっか。」


「うん。」


また手を繋いで、
車に戻り
目的の場所を目指した。

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