歩む道。

19 side Nissy ページ19

車でAの家まで来ていた俺は
一足先にAの家を出る。


玄関の前で見送ってくれたA。


西「じゃ、後で事務所で。」


「はい。」


背中を向けた俺を


「あの！」


呼び止めたA。


西「ん？」


振り向いた俺に、
背伸びをして
首に手を回して、
そのまま、耳元で言った。


「いってらっしゃい。



たか、大好き。」


そんなセリフのあとに、
頬にちゅっと触れるだけの、可愛いキス。


不意打ちすぎて、
言葉が出ない。
かぁーっと耳に熱が集まる。


西「ったく…。」


仕返しです、なんて言ってるくせに
自分でしたことに照れて
俯いてるAの頬に手を添えて、
Aの唇にキスを落とす。


西「行ってきます。」


ちゃんと顔を見れずに部屋を出る。


車に乗り込んでエンジンをかける。


頬に残る感触と、
ふんわり香った同じシャンプーの匂い。


西「やべー。
ほっぺにちゅーで、
こんなにドキドキして、

俺、いくつだよ。」


にやける顔をマスクで隠して
幸せな気持ちで車を走らせた。


俺はそのまま事務所に向かい、
事務所の中にある小さなレコーディングブースに入る。



不安だと言っていたAに、
贈りたい歌を思いついたからだ。


ごそごそと、音源を探して
一人作業を始める。


どうか、Aの不安が少しずつでも
和らぎますように。


何度か歌って、データを作り終わった頃には
集合時間が迫っていた。


スマホにはAからの着信が何件も残ってる。


西「やべ、怒ってるだろーな。」


俺は急いで集合場所へ向かった。

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