【短編集】あなたとわたしの物語 (ページ26)

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A side

『もうここに帰りません。今までありがとう。さようなら』

そう書き置きを残したのが午前4時。みどりは寝てるな。最後に顔を見ておこうか。

後悔が残るからやめよう。

「じゃあね。もう帰らないから。」

決して働く日々が嫌だったわけじゃない。学校で何かがあったわけでも、みどりが嫌になったわけでもない。

けど。このままこの生活を死ぬまで続けるのかな、そう思ったときに、この生活に意味を見いだせなくなった。

だから、私は今日あの場所で消える。

昔みどりと一緒にいようねって約束したあの海辺。

約束しようと言ったのは私。

「だめなお姉ちゃんでごめんねぇ…」

今更、後悔なんてしないって。今更、涙なんか流さないって思ったんだけどな…

視界が滲んで前が見えない。

これ以上悔いが溢れる前に、終わりにしよう。

冷たい水の中では、それが自分の涙なのか海の水なのかもわからない。私の涙も、体も、後悔も、何もかもが海に溶けて消えていく。

ごめんね、みどり

そんな言葉は海の底に消えていった。