リコリスが咲く《SPY×FAMILY》 (ページ10)

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04.黄昏とリコリス(1) ページ10

"フロディー"
ここはAが昼間働いている花屋だ。店先には数々の季節の花が飾られている。

「Aさん？」

Aがジョウロで花たちに水をあげていると、突然話しかけられた。

「あっ義兄(おにい)さん！こんにちは！」
「こんにちは、こちらで働いてたんですね」

姉の旦那、ロイド･フォージャー
1年前に結婚したと言われたが、初めて会ったのはつい先日だ。双子の兄が泥酔し、迷惑をかけて以来会ってなかったため、Aは少し気まずさを覚えた。

「あの、こないだは兄がご迷惑かけてすみませんでした…」
「いえ、そんな！こちらこそ、大したおもてなしも出来ずすみません…」

ロイドは兄である、ユーリ･ブライアを引きずりながら帰っていくAの姿を思い出していた。

「(弟が秘密警察というのは確定だが、妹はホントにただの花屋だったのか)…そういえば、ユーリくんの怪我、治ったって妻に聞いたよ」
「あ、はい！おかげさまで…姉さんのこととなると、どうも周りがみえなくなってしまって」

私もなんですけど、とはにかむ彼女をみて、ロイドは兄弟を羨ましいという感情が湧き上がる。

「あっそういえば！」
「どうしました？」
「アーニャさん、ドッヂボール大会どうでしたか？」

Aの言葉を聞き、ロイドは、ああ！と思い出したように話し出す。

「1回戦で負けてしまったみたいです、でもアーニャも頑張ったみたいですよ」
「そうなんですね…そうだ！ちょっと待っててください！」

そう言うとAは花をいくつか取り、小さな花束を作り出した。

「これ、アーニャさんに渡してください」
「これは…」
「ガザニアです、花言葉は"あなたを誇りに思う"…ドッヂボール大会お疲れ様でした、と伝えてください」
「ありがとうございます、アーニャも喜ぶと思います」

ロイドは花束を受け取り、お金を渡そうとする。

「あ、お金はいいんです！これはプレゼントですから！」
「え、いや、でも…」
「気持ちですから」
「…では、お言葉に甘えて、ありがとうございます」

ロイドの手の中でオレンジ色のガザニアが咲き誇る。ロイドが店を後にすると、Aはその後ろ姿を見つめながら、アーニャが行ったであろう特訓を想像した。

「(ホントに姉さんの特訓、よく耐えましたね…)」

Aはアーニャをリスペクトしていた───